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【後日談】一夜の夢、一生の誓い …11
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ドアのところで、どうやら仕事の話をしているのが聞こえる。
ほんの少しのやり取りの後、マキさんがビックリした声を出した。
それからすぐに、マキさんが戻って来た。
「ごめんね?仕事の事でちょっと…」
「いえ、こちらこそ…忙しいのに時間取ってもらって…。ってゆーか、驚いたような声が聞こえたんですけど、何かあったんですか?もし、あれだったら、俺のことは気にせず…」
うん、そうだ。
仕事が忙しいなら、俺なんかに構わず、仕事してください!
そして、何なら俺、帰ります!
みたいなつもりで、そう伝えた。
「いや、実は、本店の店長が抜き打ちチェックでうちに来たらしくてね。…すっごく厳しい人なんだ」
マキさんはそう言って、苦い顔をした。…けど、すぐにハッとしてその顔を笑顔に変えた。
「あ…あの人に見てもらおうかな。ね!第三者に見てもらうって言うのはどう?今からその店長呼ぶから、チラッと見てもらって、その人に合格貰えば自信持てるんじゃない?」
「えっ?でも…美容師さんなんですよね?プロが見たら絶対俺が男ってバレるんじゃ…」
「いや、バレたとしても、絶対悪いようには言わないよ。そう言うのちゃんとわきまえてるから。それに、顧客情報は絶対漏らさないから大丈夫!自信持って?何せ、俺の中ではスゲー自信作だから!ね?佐藤くんは何も喋らなくていいから。うん、ちょっと待っててね?」
「えっ?ちょっ!…あ…」
うわー。
マキさん、行っちゃった…
あの夜、マスターが言った「思い立ったら即行動」って言葉が頭の中に蘇る。
どうしよう?どうしよう?
変な顔されたらどうしよう。
プロが見るんだから、男って絶対バレるし!
そうこう悩んでると、部屋のドアがノックされた。
ガチャリとドアが開いて、カーテンが揺れたかと思うと、すぐにマキさんが顔を出す。
そして、その後に続いて顔を見せた人…
う、そ、だろ…
俺の背中がビシリと伸びた。
この女の人、見たことある。
って言うかさ、えっ?えっ?ちょっ、パニック…
和製…アンジーだ…
この人…雅治さんの…お姉さん⁈
えっ?ここって、雅治さんのお姉さんの系列店⁈
って!そうじゃん!
店の名前聞いた事あったのに、すっかり忘れてた!
俺のバカ!!
俺が固まっていると、マキさんがニコニコしながら俺の側まで来た。
「この子です。普段使い出来るウィッグなんですけど、もし何かアドバイスがあればと思って」
そう言って、グイと俺の顔を鏡に向けさせた。
やばい!やばい!
パニクって、表情が固まる。
マキさんが「本店の篠崎店長だよ」と紹介してくれた。
あああ…篠崎って…やっぱりそうだ!
遥香さんは「こんばんは。ちょっと見させていただきますね」と俺の後ろに立ったけど、俺は上手く頷けなかった。
遥香さんに、俺だってバレたらどうしよう!
男とか以前の問題じゃん!!
俺の後ろで、マキさんと遥香さんが髪の長さがどうこうとか話してるけど、全く頭に入ってこない。
…あれ?
ってゆーか、遥香さんは気付いてないのかな?
鏡の中の俺を見ながら、マキさんに何かアドバイスして…
俺を見て、ニコリと笑った。
やっぱり、気付いて…ない?
うん!それならそれで!
一度しか会ってないし、今の俺はマキさんのおかげで、きっと別人なんだ!うん!
遥香さんは、特に俺に声はかけずにマキさんと話して「私が気になるのはそこだけかな?うん。それじゃ頑張って。…では、失礼します」と言って、あっさりとカーテンの向こうに消えた。
「…っ!はぁーーー」
良かった!何も言われなかった!
気付かれなかったんだ!
うんうん!マキさんの腕、認めます!
マキさん天才!
ガチャリとドアが開いて、遥香さんが出て行く…と、ホッと肩の力を抜いたのも束の間…
ドアは閉まらずに「牧村くん、ちょっといい?」と、遥香さんがマキさんを呼んだ。
再び、俺の背筋が伸びたのは言うまでもない。
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