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【後日談】一夜の夢、一生の誓い …19
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約束の時間の5分前。
駅前のロータリー…が見える、駅の柱の陰に俺は立っている。
ここに来るまで、下を向いて早足で来た。
家から外に出る時すごく勇気が必要だったけど、空はもうすっかり日が沈んでいて暗くなり始めていたのが救いだった。
とりあえず、キョロキョロしたり背中を丸めたり…と言った怪しい行動はとらないように気を付けた。
今は、周りを…というか周りの人の反応を見るのが怖くて、ずっとスマホをいじるフリ。
たまにチラっと顔を上げるけど、俺の事を気にしてる人はいなさそう。
あー、ドキドキする!
雅治さん、早く来て〜!
そんな俺の祈りは虚しく、約束の時間になっても雅治さんは現れなかった。
…と言っても、まだ1分しか過ぎてないけど。
雅治さーん。
早くここから立ち去りたいよ〜。
ロータリーに目を凝らすけど、雅治さんの車は見当たらない。
祝日だし、渋滞にでもはまったのかな?
あれ?
ってゆーか…ロータリーが渋滞してない?
あぁ。
雅治さんの車、ここに入って来れないのかも。
入って来ても、停められるようなところがなさそうだ。
どうしよう。
って、どうしようもないけど、無駄にソワソワしてしまう。
とりあえず、俺が駅で待ってることは連絡済みだから、雅治さんからの連絡を待とう。
うう…
それから、10分…
再びスマホから顔を上げた時だった。
駅前の信号を渡って、雅治さんが急ぎ足でこちらに来るのが見えた。
「あ!」
雅治さん!
遠くからでも分かる、キラキラオーラ!
ふと、駆け出そうとした足が止まる。
待って。
どうしよう。
このまま飛び出して行って、俺だと気付いてくれる?
道の真ん中で、怪しい人だと通り過ぎられたら?
と、一歩踏み出たところで迷った時だった。
「おねーさん。ひとり?」
「っ?」
声のした方を振り向くと、同い年くらいの男が一人立っていた。
「さっきから、待ちぼうけしてるよね?ね?そんなツレほっといてさ、俺とどっか行かない?」
え?
ウソだろ?このタイミングでナンパ?
俺、男だし。
あ、いや、今は違うのか。
すげー。俺『おねーさん』に見えるのかな?
マキさん、天才だよ。
いやいや…つーか、ちょっと待って。
それどころじゃない。
俺、今パニクってる。
雅治さん、こっちに向かって来てるし、お前に構ってる場合じゃないの!
とりあえずその男から顔を逸らしてスルーした。
「ね?こんな寒い中、君みたいな可愛い子待たせるなんて、酷いツレだね?友達?それともカレシ?」
あぁ、ウザい!
話しかけんなっ!
そうこうしてる間に、雅治さんはどんどんこっちに来て…
「あっ…」
俺の前を…通り過ぎた。
だよね?だよね?そうなるよね?
だって、見た目、俺じゃないもんねっ。
「まさ…っっ」
大声で呼び止めようとして…出来なかった。
今この格好で、声を出したら…
女装って、今ここにいる人達にバレるじゃん!
そしたら、雅治さんも白い目で見られて…
「おねーさん、待って」
「っ⁈⁈」
ってゆーか、待って!待って!
いつの間にか、ナンパ男に手、握られてるんですけどっ⁈
何?何だよ!
「手、冷たいじゃん?ね!寒いんでしょ?」
「っ!!」
うるさい!
離せ!離せっ!
手を引こうとするけど、男の力は意外と強くて、逆に引き摺られそうになる。
どうしよう!
お前なんかに構いたくないの!
俺は、雅治さんを追っかけたいの!
雅治さん!雅治さん…っ!
頭が混乱して、どうしようと目をつぶった時だった。
「嫌がってるだろ?」
心臓がこれでもかってくらいに跳ねた。
聞こえてきたのは、俺の欲しい声、だったから。
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