アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
【後日談】一夜の夢、一生の誓い …40
-
行きたいところ…
正直、ここのイルミネーションは一通り楽しんだ。
なにより、もう閉園時間が迫っている。
だけど…帰りたくない。
まだ一緒にいたい。
いつまでもこうして、手を繋いで歩いていたい。
分かってる。
魔法はいつか解けるってこと。
あぁ。
今日一日だけの魔法って、まるでシンデレラだな。
…ははっ。
男のくせに、シンデレラだなんて。
俺、女々しいにもほどがある。
ギュッと唇を結んで、観覧車を振り返った。
「ん。ダイジョウブ。もう十分堪能したよ」
そう言うと、雅治さんが少し悲しそうな顔で笑った。
えっ?えっ?
雅治さんがそんな顔しちゃう?
ってゆーか、雅治さんにそんな顔されたら!
俺、頑張って魔法解こうとしてるのに…
決心、鈍るじゃん。
困るよ…
「ん。……出来ることなら、まだゆっくりしたいけど」
雅治さんのその言葉に、ちょっと泣きそうになった。
雅治さんがこんなこと言ってくれる珍しさと、雅治さんも同じようなこと思ってくれた嬉しさと。
「また、来年来よ?」
イルミネーションなんて毎年やってるんだから、また来ればいい。
…手は、繋げないかも…いや、繋げないけど。
雅治さんが隣にいる。
それだけで十分だ。
「そうだな」
そう言った雅治さんは、ギュッと手を深く握り直した。
二人で、出口に向かって歩く。
光の中をゆっくり、ゆっくりと。
途中、お土産を売っているお店の前を横切った。
「何か、見る?」
「あ。うーん。いや、いいや」
そう言ったものの、そのお店に飾られたあるものが目に入って、思わず足を止めてしまった。
見つけたのは、ここのキャラクターの大きなぬいぐるみ。
白い犬のキャラクター。
白い、と言えば…
いつか、雅治さんに買ってもらったイルカのぬいぐるみを思い出した。
あれ、前の家ではベッドでいつも一緒に寝てたんだよね。
今は、雅治さんが毎日隣にいるけど…
「ふふっ」
「なに?あのぬいぐるみが欲しいの?」
俺の目線を追いかけて、雅治さんが面白そうに笑った。
「えっ?あっ!ううん!違うよ!ちょっと…ブサカワだなーって、気になっただけ」
「ブサカワ?…可愛いか?」
「可愛いよ!白いとことか!…ふふふっ」
「白?…ふーん」
雅治さんの腕を抱えるように組んで、再び歩き出す。
実は、腕も組んでみたかった。
えへへ。
あのぬいぐるみをもらった日。
あの日から今日まで、本当に色んなことがあった。
これから先も、きっと色々あるのかもしれない。
けど、雅治さんとなら、どんなことでも乗り越えられる。
こんな魔法のような日だってあるんだもの。
出口を出てすぐ、今度は雅治さんが足を止めた。
俺を見た後、後ろを振り返る。
つられて俺も、振り返った。
さっきまでいたはずの場所が、外から見ると、なんだかとても遠く感じた。
「陸」
「ん?」
「この後、行きたいところがあるんだけど…」
「うん。いいよ」
「あの…その格好でも…」
「あ…」
そうだ。
俺、女装中。
「えっと、どこ行くの?」
「それは…今は言えないんだけど…よかったらそのまま一緒に来て欲しい」
こちらを見た雅治さんは、なんだかとても真面目な目をしていた。
「う、ん」
だから、思わず頷いた。
魔法はまだ、終わらない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
546 / 559