アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
言葉にする
-
月曜日。
午前中は先週末の出張の片付けをしていた。
総務にて、出張の旅費精算の手続きをしていた時、アキちゃんから「なんか元気ないですねー?」と言われた。
あー。くだらないことで他人に分かるほど態度に出すなんて…俺、ダサ…
「そう?元気だよ?」
なんて強がったけど、弱ってた俺は、その気遣いがすごく嬉しく感じた。
「そうですか?…週末、S電機さんの所に行ってたんですよね?そこで何かあったとか?」
うっ…
アキちゃん、なんでこんなに気付いてくれるんだ。
この気遣いが、皆に好かれる原因なんだなと改めて思う。
「いや、何にもなかったよ」
そう言って笑って見せた。
「そう、ですか…」
アキちゃんが淋しそうに笑って、俺の提出した書類に目を落とした。
あー。
後輩に心配かける、情けない俺。
ふと、アキちゃんに話を聞いてもらいたくなった。
ちゃんと話した方がアキちゃんにも心配かけずに済むのかもしれないし…
アキちゃん、俺と小栗さんの事、最初から何か気付いていたみたいだし。
…って、そう思ったのは言い訳かも知れないけど。
本当はこの想いを言葉にしてみたいんだ。
昼休み、アキちゃんにLINEを送った。
"今日、定時あがりなら飯でも行かない?前に奢るって話したでしょ?"
すると、びっくりするくらい早く返事が来た。
"定時です!行きます!"
可愛い猫が「わーい」と喜ぶスタンプ付き。
店をどこにしようか悩んでいたら、アキちゃんが私が予約しときますって言ってくれたので、任せる事にした。
アキちゃんが予約してくれたのは、会社から離れた駅のそばにあるダイニングバーだった。
定時後、アキちゃんの提案で、会社の最寄り駅ではなく、お店のある駅で待ち合わせとなった。
会社の人に会わないようにって気を使ってくれたみたい。
駅で待ち合わせをして、お店に行った。
「うわ!すげ」
そこは、店内に水槽があって、とても雰囲気の良いお店だった。
「このお店、前から来てみたかったんですよね~!でも、機会がなくて…。今日来れて、本当に嬉しいです」
ニコリと微笑んだ笑顔は本当に嬉しそうで、今回誘って良かったと純粋に思った。
席について、ビールで乾杯する。
「「お疲れ様でーす」」
ゴクリと喉を潤す。
はー…仕事の後の一杯って、どうしてこう美味しいのかなぁ。
それから、ゴールデンウィークの話とか、お互いの仕事の愚痴とかで盛り上がって…と言うか、アキちゃんが盛り上げてくれた。
金曜日の夜から一人で悶々としてたから、今日こうやって楽しくご飯が食べれて良かった、と思う。
アキちゃんが食後にデザートが食べたいと言って注文した後、突然お互い無言になった。
それまでニコニコしていたアキちゃんが、ちょっと真面目な顔をして俺を見た。
「あの……今日誘ってくれたのは、やっぱり週末何かあったからですか?S電機で…小栗さんと何かあったとか?」
この子の気遣い、すごいなぁ。
「アキちゃんって、本当に人のことよく見てるね。会社の皆に好かれるのが分かるよ」
言った後で、しまった、と思った。
アキちゃんが真っ赤になって下を向いたからだ。
「!っ…いや、その…。佐藤さんの事は…また別と言うか…」
「あ…ごめん」
「いえっ…こちらこそ…」
アキちゃんがまた黙った。
俺が…何か話すのを待ってくれてるのかも知れない。
話しても、いいかな?
と言うか…聞いてもらいたい。
「あの…俺がアキちゃんにこういう事話すのって…アキちゃんは嫌かも知れないけど…」
「!」
アキちゃんが顔を上げて、ブンブンと首を振った。
「アキちゃんにさ、いつかそう言われた時は否定したけど…
実は俺、あの人の事が…小栗さん…が、気になってる」
初めて言葉として外に出せたその言葉は、自分で言ったにも関わらず、俺の中にストンと落ちてきた。
アキちゃんは何も言わずに小さく頷いた。
それだけで…俺のこの背徳感たっぷりの想いが肯定されたような気分になった。
あぁ…
他人に受け入れられることで、こんなにスッキリするとは思わなかったな…
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
122 / 559