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【番外編】 小栗雅治の独白 2
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作業後に、佐々木さんと佐藤君をうちの課の飲み会(佐藤君の歓迎会と言う名目の)に連れて行った。
良い意味で色々と裏切ってくれる佐藤君に、若干興味があったので、隣の席に座れた時は少し嬉しかった。
うん…
これから成長が楽しみな後輩が出来た感じ?
とりあえず、少しでも仲良くなれたら今後の業務もスムーズに行くだろうと思い、普段なら加藤のウザい話にキレるところを我慢して、佐藤君の様子を観察した。
年齢が25歳と聞いた時は、正直驚いた。
てっきり20歳(ビール飲む前は10代かと)思っていたから。
そうか。
どうやらその見た目で悩んでいるらしい。
…俺と、似たような悩みがあるんだな。
もしかしたら、この短髪や大人びたデザインのネクタイは、そう言うのに反抗した結果なのかも知れない。
俺がこうやって粋がって無愛想な態度を取るのと似てるかも…
そう思うと、少し親近感が湧いた。
飲み会も終盤と言う時に、加藤が太極拳の話題を振って来た。
俺は中学の時に、映画で見た少林寺拳法の影響を受けて、中国拳法を習い始めた。
大学に入ってからは、バイトと友達付き合いでほとんど通わなくなったが、社会人になってこっちに来てから体力をつけるために再開した。
仕事が波に乗ってなかなか道場に通えなくなった時、その時の先生から太極拳を勧めてもらった。
個人的には、土日もないような今の業務で風邪一つ引かないのは、太極拳のおかげだと思っている。
だからつい、佐藤君にも勧めたくなった。
佐藤君のように筋肉の少なそうな子でも、太極拳なら無理なく出来る。
それなのに…
俺は何か変な事を言っただろうか?
腹式呼吸について、佐藤君に教えた後から、突然慌てたような感じになって目をそらされた。
…俺、何をやらかしたんだ…
一人、悶々と酒を飲んでいたら、加藤が別の話しを振って来た。
面倒くさい…
こいつは酒が入ると、つまらない愚痴が増える。
適当に相槌を打ったのが「恋人つなぎって何?」だった。
知らない訳無い。
嫌味のつもりだった。
と言うか、適当な質問で適当に喋らせとこうと思ったから。
だが、俺のその問いに応えたのは、佐藤君だった。
「こうやって恋人同士が手をつなぐことですよ」
…と。
お酒のせいか、昼間よりも確実に潤んだ目で俺を見上げながら、その手をスルリと俺の指に絡めて来た。
ドクン…
え⁈
反射的に手を振り払う。
波打ったのは、心臓だけじゃ無い。
不覚にも、俺の男としての部分が、揺さぶられたのだ。
ビールを煽りながら言い訳を口にしたが、俺の頭の中は若干パニックだ。
なんだこれ…
彼の指が俺の手を絡め取ったあの瞬間、単純に「気持ち良い」と身体が反応したのだ。
過去に付き合った女達とこんな風に手をつないだ事はあったが、こんな風に何かを感じた事など一度もなかった。
細くて…滑らかな手触りの指…
いやいや、どうしたんだ?俺。
仕事疲れが溜まって、変に酔っているのだろうか…
それとも長いこと彼女がいないための欲求不満?
何にしろ情けないな…
それから会が終了するまで、俺はずっと佐藤君を意識して観察してしまった。
グラスを持ち上げる綺麗な手はもちろん…
ほんのりと赤く染まった、頬。
可愛らしく微笑む、唇。
スラリと伸びる首筋。
これらも、滑らかで柔らかいんだろうか?
触れたら、気持ち良いんだろうか?
…クソ。
マジで、俺、欲求不満だろ?
そういや、最後に女とヤったのいつだ?
前の女と別れたのが…2年?いや3年前か…
やべーな。
そろそろ女でも作るかな…
なんて考えつつ、目は佐藤君を追う。
この時は心の何処かで、必死になって気付かないようにしていたけど…
この日、俺は彼に囚われた。
これは後から気付く事実。
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