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【番外編】 小栗雅治の独白 14
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「んでー?何があったん?元ミス、美人だったしいい身体してたし、何より二人いい雰囲気だと思ったけど?」
ヤマが見た目に似合わない、可愛らしいカクテルを飲みながら俺を見た。
「オグ…まさか!インp『ドカッ』イテッ!」
「違う」
「じゃー何?あんないい女、なかなかいないぜ?」
ヤマがカウンターの下で俺に殴られた太ももをさすりながらジトッとした目で聞いてきた。
こんな時…俺が喋るまでヤマは引かない。
ため息をひとつ吐いて、俺は腹を括った。
「…他に気になるヤツがいる。そいつを思い出したら、なんか…駄目だった」
「ヒョー!!マジで⁈えっ?つか俺、オグの口からそんな溺愛チックな言葉聞いたの初めてなんですけど!!何それ?そんなに良い女なの⁈」
ヤマが笑顔と驚いた顔とを繰り返しながら、ワタワタした。
確かに俺は、今まで誰か一人に執着したりするような話をした事はない。
「…お前だから言うんだからな?」
「わーってるって!で?オグにそんな行動取らせるのってどんな子なん?」
「…仕事で会った。委託先の新人」
佐藤君のホワリとした笑顔が頭に浮かんだ。
「へぇ〜!仕事でねぇ〜。で?で?」
ヤマが楽しそうに、でも嬉しそうに俺を見る。
親友のこいつは、俺の久々の浮いた話を喜んでくれているんだと思う。
昔から、お互い何でも話してきた仲だから、遅かれ早かれ、俺は佐藤君の話をこいつにはすると思った。
それなら、今話してもいい。
「…そいつ、…男だから」
ふと、佐藤君と年明けに会える事を思い出して…口元が綻んだ。
「………へ?…ごめん。も一回言って?」
「……嫌だ」
「え?え?え?ごめ…俺、今パニック。え?オグが?女好きなオグが?あんだけ女はべらしてたオグが?…え?やり過ぎて女に飽きたとか?」
「耳が痛い。…違うよ。そうじゃない」
「え?じゃあ、なに?」
困惑顔のヤマを見ながら、一つ息を吐いた。
「とにかく…本気で………落ちた」
それまでキャイキャイ言っていたヤマが、俺をジッと見た後、静かに長く息を吐いた。
「あーー…。そっかー。落ちたかぁ、落ちちゃったかぁ」
カクテルグラスに目線を移して、ちょっと複雑そうに…でも優しく微笑んだ。
「…引かないのか?」
「…んー。まぁ、内心は超驚いてる。けど、そいつがスゲェ子ってのは分かった。だって、クールなオグにそんな本気の顔させんだろ?」
「は?」
「何かさー、さっきからそいつのこと思い出してるだろ?スゲー幸せそうな顔してるぜ?」
「……」
何も言えずにビールを煽る。
「…クックック…オグが…あのオグがっ…恋してるッ!スゲェ!ウケる!」
突然ヤマが、肩を震わせて笑い出した。
「ッチ!うるせえな!これでも忘れようと必死なんだよ!」
「ゴホゴホッ…え?忘れる?なんで?」
「脈が、ない」
「ブッ!!クックッ…さすがのオグも男は落とせなかったってか⁈つか、何⁈告ったの⁈」
「してないよ。それ以前の問題」
ヤマが「何それー!!」と大爆笑している。
「ブクク…でも、その顔。忘れられねーんだろ?クッ…マジでどんな奴なの?超気になる!」
「………スゲー可愛いくて、エロい…」
「ぶはっ!オグっ!…マジ…やめ!…つか、その顔…ッッ!俺、笑い死ぬ!!」
ヤマが腹を抱えて笑い出した。
相手が男である事は引かずに、俺が恋してると言って笑う…
そこ?と思うが、今の俺にはとてもそれが有り難かった。
一通り笑い終わったらしいヤマが、目尻の涙を拭きながら言った。
「とにかく好きなんだろ?なら簡単に忘れられなくて当然だろ。仕方ねーよ」
「…ん」
カウンターの上に置いた、自分の手のひらを眺めてギュッと握った。
ヤマが俺の顔をみて、ふ〜んと頷いた。
「なんかさ〜オグにそんな顔させる奴に、超〜会ってみたいんだけど?」
「嫌だ。お前に見せるのは勿体ねぇよ」
「ククッ!…ヤベェ。オグが…マジだ!…ちょ、ごめん!」
そう言ってまたヤマが笑い出した。
笑いたきゃ笑え。
そうだよ。好きすぎて…自分でも俺が俺らしくなくて、なんか可笑しいもんな。
はは…
簡単には忘れられない。
仕方ない。
今は、その一言に尽きる…
早く…会いたい…
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