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【番外編】 小栗雅治の独白 15
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年が明けて…
佐藤君と、約束の日。
とりあえず逆ナンに邪魔されないように、伊達メガネを準備した。
それから、いつも以上に話しかけるなっていう雰囲気を出して駅の改札に立つ。
話しかけるな…っていうか、邪魔するな、だな。
はは。
落ち着きのない自分の行動が可笑しくて仕方ない。
久しぶりに会った佐藤君は、少し髪が伸びていた。
長い方がやっぱり似合う。
…うん。可愛い。
想いを露わにした笑顔を佐藤君に向けている自分に気付いた時は、妙に恥ずかしかった。
居酒屋にて。
会うまでは、前にあんな事もあったし、二人の間には何らかの壁ができているだろうと思っていた。
だが全くそんな事はなく、むしろ楽しそうに話しかけられた。
…本当に、なかった事にされたんだな。
そう思うと、寂しいような…なんとも言い難い気持ちになった。
ただ、そうして楽しく話していると、もし今の職場を去って、佐藤君と仕事のつながりがなくなったとしても、東京にいたらまた飲みに誘えるんじゃないか?という気になってきた。
とりあえず、この場を一緒に楽しめば、次に繋がるかもしれない。
そんな事を考えていた。
考えて、いたのに…
その時は、突然やって来た。
「も〜、小栗さん。俺にこんなに飲ませてどうする気ですかぁ?」
…は?
それは…今回、触れてはいけないところでは?
冗談にしては、タチが悪すぎる。
…酔い過ぎだろ?
そう思って、佐藤君のグラスを奪って飲み干した。
「酔った勢いで」に、二度目はあるか?
…ないだろ?
気付かせてやらないと。
そう思って、わざとこの前の事を思い出させる事を言った。
「本当に…この間の事は、すまなかった」と。
その後、まさかこんな答えが返ってくるとは思わずに…
「僕なんて、忘れるどころかあの日からずっと意識しっぱなしなんです。今回こうやって誘ってもらって、本当に嬉しかったです。
それに、電話でも言いましたけど、嫌じゃなかったですから。あの日のことは後悔していませんから…」
何を言っているのか、理解できなかった。
忘れるって言ったろ?
佐藤君が、そう言ったんじゃないか…
なのに…
忘れるどころか…?
嫌じゃなかった?後悔していない?
その上で、今回誘われて嬉しかった、と?
それはつまり、
佐藤君も俺と同じように、俺を意識しているという事だろうか?
特別な感情を持って?
そう思うと、それまで閉じ込めていた彼への愛しさが急に溢れ出した。
もしかしたら、俺のこの想いは一方通行じゃないのかもしれない。
佐藤君の揺れる瞳を見ていたら、それに引き寄せられるように彼の気持ちを確認しようとする言葉が出てきた。
「もし佐藤君が、俺と同じ…」
気持ちなら。
と、言いたかったのに…
店員に邪魔された。
「どこか、静かに話せる場所に移動しない?」
思わず、そう提案した。
その後…
まさか、彼の自宅に誘われるとは思っていなかった。
ただ、本当に静かに話せるところで、佐藤君の気持ちを確認したかっただけなのに。
あの話題の後に部屋に誘われた、と言うことは、間違いなく彼は俺との関係を進めたいと思っているんだよな?
彼の家への道すがら、我慢できなくなった身体が彼の手を取る。
顔を真っ赤にして、潤んだ目を泳がせるその姿は、俺を拒んでなどいなかった。
部屋に入って、これからどうしようか考えていたら、佐藤君が
「居酒屋で…小栗さん、何か言おうとしましたよね?その…店員さんに邪魔される前に」
と、切り出した。
佐藤君が、俺と同じ気持ちなら…
つまり、俺に恋愛感情があるなら。
あの時は、そういった事を聞こうとした。
でも、改めて言おうとすると、それを口にできなかった。
実は俺は、告白の類をした事がない。
…今まで必要なかったから。
今回は…初めての展開で、右も左も分からない。
なので、こういう時に、どう気持ちを伝えればいいのか分からなかった。
だから、その時の俺は、曖昧な事しか言えなかった。
この時、ちゃんと本心を言葉にして伝えるのを怠った事を、俺は後々になってとても後悔する。
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