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各々の主張 …3
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「人に聞かれたくないから」と亜由美が言うので、お店の人に断って、店の外に出た。
「とりあえず、ごめんなさい」
店の外に出て、最初に亜由美が口にした言葉がそれだった。
「あ、えーっと…」
「今回の合コン、多分、リーが仕組んだんだと思う。…陸君も私が来る事、知らなかったんでしょ?」
最初に会った時、お互いびっくりした感じだったから、亜由美も俺が来る事は知らなかったんだろう。
「あ、うん。でも…なんでリーさんがそんなこと?」
「実は、言い辛いんだけどね…。リーが変なこと言い出す前にちゃんと話しておこうと思って。…その…」
唇をギュッと結んで少しの沈黙が流れた。
亜由美は、言いたいことがあってそれを頭の中でまとめる時に、こうやって黙る癖がある。
見た目が大人になってもこういうところは変わらないんだな、と懐かしい気持ちになった。
「…結論から言うと、リーは、私がまだ陸君のことを好きだと思ってる」
「えっ?」
どういうこと?
「昔の話になるけど…私たち、自然消滅みたいになっちゃったじゃない?」
「うん…」
「入社してから、本当に仕事に慣れるのに精一杯で、なかなか連絡出来なくて…。あの時は、本当にごめんなさい」
「え?俺の方こそ!忙しくて、連絡してなかった。…あの時は、ごめん」
ずっと言いたくて言えなかった謝罪の言葉。
長年の凝りがスッと解けていく感じで、お互い目を合わせて、少し微笑んだ。
「あの頃、もう連絡ほとんど取らなくなってて…言ってなかったけど…冬くらいに携帯水没しちゃって。その時、携帯変えたの」
「あ…そうなんだ…」
確か、これからの事ちゃんと話さないと、と思って…まあ、半分は別れ話のつもりで…年明け頃に連絡したら、もう連絡が取れなくなっていた。
「実はね、その頃、職場で気になる人が出来たの。…辛かった時、そばで支えてくれた人。…それで、陸君とはもうほとんど連絡取らなくなってたし…もう今さら新しい番号を教えるのも変だと思って。そのまま音信不通になった。本当に…ごめん」
亜由美が頭を下げる。
そっか。
あの時は嫌われて拒否られたのかと思ったけど…
そうじゃなかったんだ。
「いや、俺の方こそ…。連絡が減ってきた頃から、いつか別れるのかな…とか思いつつ、その話題から逃げてたから」
お互い様だ。
あ。
そうか、拒否られたんじゃないなら…
「…あ、あのさ。これを機に仲直り?っていうか…また友達に戻れないかな?大学の飲み会に、亜由美が参加してないの…ずっと悪いと思いながら、放っておいた。…ごめん」
変な別れ方をしたせいで、亜由美に遠慮させてしまっていた。
それが、ずっと気になっていた。
「いや。逃げてたのは私だから。…うん。…そだね。また、友達になろう」
今度はしっかり目を合わせて笑った。
「それで、リーなんだけど…。私、リーにも、その職場の気になる人の話をしてなくて…。私たちが自然消滅した後、ずっと彼氏も作らずに、リーの合コンの誘いも断ったりして。
だからリーは、私がまだ陸君との事を引きずってると思ってる。それで…今回の事を計画したんじゃないかな?なんか…色々と、ごめんなさい」
「あ…」
そういえば、大学の飲み会の時に、リーさんが亜由美の名前を出したけど、あれは俺に何か探りを入れようとしたのかな?
「陸君は今回の合コン、無理矢理参加だったんじゃない?」
「え?あぁ…まあ、オカに無理矢理っていうか、騙されたと言うか…」
理由は言えないけど。
「オカ君と、相変わらず仲良いんだね。オカ君…全然変わってなくて…ふふっ、可笑しかった。…陸君は…あ、いや、さとちゃんはなんか変わったね。あ、良い意味で、だよ」
「そう?」
亜由美は一線を引くように、皆が俺をそう呼ぶように「さとちゃん」と呼び方を変えた。
「うん。…昔なら、無理矢理連れてこられた合コンだとしても、もっと楽しそうに過ごしたんじゃない?でも今日は、やる気ないのバレバレだよ?…今、付き合ってる人がいるとか?」
「えっ?」
いや、確かに、やる気はないけど…。
バレバレとは…
気付かないうちに、相手に失礼な態度取ってたのかな?
…反省。
「あっ、ごめん。それは私が気にする事じゃなかったね」
「あ、いや。…うん。今、付き合ってる人がいる。あー…そうだ。リーさんはそのこと知らないから」
「そうなの?あ、そうか。だから合コン開催したのか。…でも、オカ君も知らなかったの?」
「う。…実は、オカは知ってるんだけど。まぁ…色々あって」
色々あって、の先は言えない。
なんか、言えない事ばかりだな。
今日の集まりで、一番悪いのは、俺な気がしてきた。
亜由美は…亜由美ちゃんは俺の顔を見て何か察したのか、特に追求はしてこなかった。
「…そっか。とにかく、リーが何か変なこと言ってきても気にしないでね?…私、その…さっき話した職場の人と、今良い感じになってて。それも含めて、ちゃんとリーに話すから」
「うん。そっか」
「ふふっ。あー…。なんか、今日こうやって話せて良かった。そこはリーに感謝しなきゃ」
「うん。俺も、話せて良かった」
ちょうどその時、オカから「今どこ?」って電話がかかってきた。
オカの大声はスマホから漏れていたみたいで、二人で笑いあって、店内に戻った。
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