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続・各々の主張 …2
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「あ、車、ここだよ」
雅治さんがパーキングに入っていく。
ピッとリモコンキーで車を解錠すると、車が位置を示すように、ピカピカとランプを点滅させた。
「俺、助手席がいいな」
と、オカが言った。
「えっ?」
と、返したのは亜由美ちゃん。
え?
亜由美ちゃん、もしかして雅治さんの隣に座りたかったの?
…車に乗りたいって言ったのは、雅治さんが気になったからなのかな?
だとすると、ちょっと複雑…
でも、その考えとは裏腹に亜由美ちゃんは俺に言った。
「小栗さんの知り合いはさとちゃんなんだから、さとちゃんが隣に座るのが普通でしょ?」
「えっ?あ、うん。いや…でも、いいよ?オカが助手席がいいなら…」
ここで「隣に座りたい」と言えない、勇気のない俺…
と言うか、オカが何考えてるか分からない。
単に俺と雅治さんを遠ざけたいのか。
…いや、隣に並んでるのを見るのが嫌なのかも。
同性カップルを認めたくないんだから…その可能性大だよね。
雅治さんを見ると「好きなところにどうぞ?」と、仕方ないねって感じで俺に目配せした。
結局、オカが助手席に乗って、俺と亜由美ちゃんが後ろに乗った。
雅治さんが二人の家を聞いて、オカ、亜由美ちゃん、俺の順に送ってくれる事になった。
と言うか、オカが一番最初に降ろしてもらう事を望んだ。
オカと亜由美ちゃんの家はすごく近かったから、どっちが先でも良かったみたいだけど。
行き先を決めた後、少しの間、沈黙が流れた。
車内にラジオの音だけが響く。
「あの、小栗さんは普段何してる人ですか?」
オカが最初に口を開いた。
「俺?サラリーマンだよ?S電機に勤めてる」
「へえ。…普通のサラリーマンが、あんな場面に乗り込みますかね?」
ええっ⁈
オカ、何で雅治さんにケンカ売ってんのっ?
「オカ!小栗さんは、S電機でエンジニアやってる人だよ?そこで…仕事で知り合ったんだから。それに、ま…小栗さんは、中国拳法とか太極拳とかやってて、強いんだから!だから助けてくれたの!」
「でも、あんなに簡単に決着つくかなぁ?…あの悪そうな連中、知り合いだったとかじゃないんですか?だって、相手の強さも分からないのにケンカ売って…。あれは無謀ですよ」
「オカ!失礼だよ」
オカ、もしかして雅治さんのこと、嫌いなの?
雅治さんはオカの態度に不機嫌になったりせず、変わらないトーンで返事をした。
「あはは。まあ、確かに。今思えば無謀だったかな。ちなみにあいつは知り合いなんかじゃないよ。説明すると、ああ見えて俺たちちゃんと戦ったからね」
「…戦ったようには見えませんでしたけど…」
「そうだな。うーん。口で説明するのは難しいけど、胸ぐら掴まれた後、あいつの手首を掴んで…あの時、力比べしてたんだ。あいつも何かしら体術をやってるんだろうね。お互い相手の強さを推し量ってたって訳」
「それに…勝ったと?」
「そう。信じてもらうしかないけどね」
オカが、何かを考えるように黙った。
あの時、力比べしてたの?
…ドレッド男の手首に、雅治さんの手の跡が赤く付いていたのを思い出した。
不意に亜由美ちゃんが口を挟む。
「ねえ?そーんな難しく考えなくてもさ、もし、オカ君が彼女が捕まってる場面に遭遇したら、とりあえずあんな風に身体が動くんじゃないかなぁ?相手が強そうとか関係なく」
「えっ?…あ」
「それに、例え無謀でも、あの場面で彼女を助けに行かない方がどうかと思うけど。ねっ?」
「あ、ぁ…まあ…それはそうだけど。…確かに」
オカが、少し考えてから頷いた。
てか、亜由美ちゃん?
今の、まるで雅治さんが彼女を助けたような言い方じゃない?
…あの場面の「彼女」って、俺だよね?
俺たちのこと、気付いたの?
それともカマかけ?
最近、女は鋭いと知ったので、俺は怖くて亜由美ちゃんの方を見れなかった。
亜由美ちゃんは、あの時のことを思い出しているのか
「それにしても…カッコ良かったなぁ…」
と、つぶやいた。
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