アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
女の戦い? …3
-
松井さんが見えなくなると、さっきまでニコニコしていた河野さんが、嘘のように渋い顔をした。
「何、あの子、ストーカー?…こんな場所で会うなんて、偶然じゃないわよね?何でここが分かったの?…場所、教えてないわよね?」
河野さんが、気持ち小声で話す。
まぁ、松井さん達はここから見えない席に通されたみたいだから、よほど大声で話さない限り会話は聞こえないと思うけど。
「教える訳ないだろ。…まぁ、しいて言えば、ここに来る前にあいつに飲みに誘われた。…先約があるからって、断ったけど。…デートか?ってしつこく聞くから、会社のやつと呑みに行く、とは答えたよ」
「うわ…じゃあ、後をつけられてたって訳?…怖っ」
河野さんが腕を抱くようにしてさすった。
「掴み所がないところも怖いわね。こんなにあっさり引くなんて。計算で動いてるんでしょうけど…」
河野さんが何かを考えながら、ビールを口にする。
「こういうのって、前からなの?後をつけられたりとか」
「いや、今回が初めてだな。…あぁ、今月からうちのジムにも来だした」
「そっか…。じゃあもしかしたら、小栗くんがなかなか落ちなくて、焦って来てるのかもね」
雅治さんが大きなため息を吐いた。
「これはもう、上司に相談レベルでしょう?…分かった。任せなさい。私が上手いこと言っておくから」
「おい、勝手に…」
「こーゆーのは女から言う方が上手くいくこともあるわ。まぁただ…今走ってるジョブが3月までだし…トレーナー関係の解消はもう難しいでしょうねぇ」
「え?」
トレーナー関係の解消⁈
そこまでっ⁈
「…佐藤さん?あなたは何も気にすることないのよ?うちの会社の事だし?…万が一あなたに迷惑をかける事があれば、それこそ会社として対応しなきゃだし。あなたは、どーんと彼氏やってればいいのよ」
ううっ…
「…ありがとうございます…っ」
河野さんがとても頼もしく見えて、俺、こんな人に恵まれて幸せだなって思った。
「…いや、なんだか、あなたの場合、彼女って言う方がしっくりくるわね…」
河野さんがポツリと呟く。
えっ?何?
「陸がなにかされる前に、俺がちゃんとしなきゃな…」
雅治さんも、ポツリと呟く。
雅治さん…
「…さ、もう松子の話はいいわ!…とりあえず、松子に聞かれても良いような話をしましょうよ。さぁ!惚気を聞こうじゃない」
ちょっと!
話の振り方が強引!!
…惚気って言われてもなぁ。
「…と。その前に、食べ物追加しようかな?佐藤さんは?何か欲しいものある?」
河野さんがメニューを渡してくれた。
渡された「今日のオススメ」メニューの、ある部分に目が止まる。
「あ!雅治さん!見て!きびなごの天ぷらがある!これ、九州で食べて美味しかったやつだよね?」
そう言って雅治さんにメニューを見せる。
クリスマスに連れて行ってもらったお店で出てきて、初めて食べたんだけど、すごく美味しかったんだ。
あまりに美味しくて感動してたら、雅治さんが自分のもくれたんだよね…
あーんって…
ふふっ。
「あぁ、陸が気に入ってたやつ?…ん。それ頼もうか?」
メニューを覗き込んだ雅治さんも、思い出してくれたのか、優しく微笑んでくれた。
河野さんが、そんな俺たちのやり取りを見て、笑いを堪えて顔をフニャリとさせているのに俺たちが気付くまで、あと数十秒…
それから、河野さんに弄られたりしながら楽しく飲んだけど…
やっぱり長居する気にはなれなくて、食事を終えてからすぐに店を出た。
松井さんに後をつけられてないか、気になって仕方なかったけど、その日はそれ以上何もなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
342 / 559