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二宮課長さん …2
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その日は、思ったように作業が進まなくて、遅くまで残業させてもらった。
河野さんは、他の仕事があるらしく「終わったら声かけて!」と言われて、現在放置プレイ中。
ちなみに、佐々木さんも特に声をかけてこないので、自分のマシンで格闘中…と思う。
どのくらい没頭していたのか…
「あれ?お疲れ様!まだいたんだ?」
と、後ろから声をかけられるまで、俺はずっと画面と睨めっこしていた。
振り返ると、二宮課長さんがいた。
「あっ、お疲れ様です!」
時計を見ると、もうすぐ22時になるところだ。
「どう?進捗は」
「えーと…今日はここまでやりたいんですけど、このテストが、どうしても上手くいかなくて…」
「どこ?ちょっと見せて?」
「はい。ここ…このラインからなんですけ…ど」
俺が画面を指差すと、二宮課長さんがひょいっと画面を覗き込んだ。
「…あー。ここ、スクロールして…あ、ごめん」
二宮課長さんがマウスに手を置こうとして、途中で止めた。
と言うか、正確には、マウスを握っていた俺の手の上で。
慌ててマウスからパッと手を離して「いえっ」と答えた。
二宮課長さんは手を止めてくれたけど…指が少し触れて…
もう少しで手を握られるかと思った。
ビックリしたー。
そんな俺にお構いなく、二宮課長さんはすごい真剣に画面とデータを見比べている。
ううっ。
お客さんにこんなことしてもらうなんて…
申し訳ない、と言うより、恥ずかしい。
それにしても、二宮課長さん…
仕事中って、顔が別人みたいだな。
昼間のチャラい人とは思えない(酷い?)
普段はフワリと優しい感じなのに、真剣な顔は男らしいなぁ…
なんて思っていると、二宮課長さんが「ここ」と、一点を指差した。
「ここと…ここ…順番入れ替えて。あと…ここの数字、0.01下げていいよ」
「え?ここですか?」
「うん。些細なことだけど、試してみて?」
言われた通りにプログラムを修正して、実行してみる。
「あ!上手くパスしました!すごい!ありがとうございます!こんなこと気付かないなんて…」
「はは。これはおまじないみたいなもんだよ。最初のやり方の方が正規だから、佐藤くんは間違ってないよ?あと、この数字の変更部分は一応河野にも伝えといてね。このくらいなら問題ないと思うけど」
フォローしてもらって恥ずかしいのに…
それをあまり感じさせない、嫌味のない言い方。
「はい。本当にありがとうございます!」
「いーよ。ここ、初めてのテスト内容だから難しいでしょ?」
「はい…でも、力不足で、すみません」
俺が頭を下げると、二宮課長さんはいつものホワリとした笑顔を返してくれた。
客先というストレスの中で、この優しさはかなり身に染みる…
「いや、佐藤くんは十分力になってくれてるよ。…じゃ、残りは明日でいいから…明日は午後少し時間があるし、また見てあげるよ。という訳で、今日はもう帰っていいよ?」
「あ…はい。ありがとうございます」
本当は、もう少し…
予定のところまで終わらせたい。
けど、この場所を借りてるだけなので「帰れ」と言われれば、帰らなきゃだよね?
明日、手伝ってくれるとも言ってくれてるし、それを無下にするような行動は出来ない。
もどかしい立場…
「佐々木さんもまだいるのかな?…様子見てくるから、片付けたら帰っていいよ?河野には俺から伝えとくから」
「はい!ありがとうございました!」
残業中とは思えない、疲れを感じさせない足取りの二宮課長さんの背中を見送ってから、俺はその日の作業を終了した。
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