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接近 …2
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二宮課長さんがコーヒーを開けるのに合わせて、俺もプルタブを開けて、コーヒーを飲んだ。
「あー、奢りで飲むコーヒーは美味いなぁ」
「あ、いえ!すみません、こんなもので…」
「いやいや、気持ちが込もってて嬉しいよ?…それにしても、佐藤くんって、真面目だねぇ」
「えっ?いや…そうですかね?」
「うん。…そうだなぁ、佐藤くんって、A型、長男?」
「あ、そうです」
「やった。当たり〜?それっぽいもん!…じゃあ下は、妹さん?」
「そう、です」
「あー、ポイもんねぇ!」
「えっ?俺、そんな分かりやすいですか?」
二宮課長さんが、優しく笑った。
「いや…真面目で、頑張り屋さんで…あと、何かガサツじゃない優しさがあるから。なんとなくそうかなー?って」
「はは、すごいです。それだけで分かるなんて」
「俺、人間観察が好きだから」
「へぇー」
「いや、一度失敗してるからかな?人の行動とか考えてる事に興味と言うか…つい深読みしたくなるというか…」
そう言って、缶コーヒーを口に運ぶ。
失敗って、…離婚のことかな?
「って、こんな話してごめんね?佐藤くんってさ、何か癒しオーラがあるよね。つい、何でも話したくなっちゃうって言うか。……佐藤くんってすごくモテるでしょ?」
「えっ?そんなことないですよ!」
「またまたー」
「そう言う二宮さんこそ、すごくモテそうです。笑顔が癒されると言うか…優しくて、すごく頼り甲斐がありそうですもん」
お世辞返しで言ったけど、半分本気。
二宮課長さんって、すごく不思議な雰囲気があって、こうやって色々話してくれて、優しくて、頼り甲斐ありそうで…
お兄ちゃんみたいな?そんな感じ。
「いや、俺、そんなにモテないよー?…って言うかさ、好きな子にモテたいよね〜」
「あー。分かります。一人にモテてたらそれで良いです」
「おー、言うねぇ。ってか、そのセリフ、なんか余裕あるなぁ。やっぱモテる男は違うなぁ」
二宮課長さんが面白そうに笑う。
「いや、モテませんて」
俺も笑って返した時、後ろから「お疲れ様です」と声がした。
「あ、お疲れ様です!」
振り向くと、そこに雅治さんが立っていた。
あれ?
ちょっとピリッとしてる?
いや、ハリウッドオーラの延長?
「おー、小栗、どうした?」
「いえ、今から出るので、その前にTエンジのお二人に挨拶を、と思いまして」
そっか…
出張、行っちゃうんだ…
あっ!ダメダメ!
二宮課長さんの前で、寂しい顔とかしちゃダメ!
「お、そっか。今から行くのか。気を付けてな」
「はい。…佐藤くん、何か困った事があったら、すぐ電話でもメールでも、連絡してね?迷惑かけて申し訳ないけど…」
「あ、いえっ!わざわざ、ありがとうございます!出張、気を付けて行かれてください。…あ、佐々木は今、食堂の近くの喫煙室の方に…」
「あぁ、そうか。ありがとう。それじゃ、頑張って。…では、失礼します」
雅治さんは俺を見て少し微笑んだ後、キリッとした顔で二宮課長さんに挨拶をして去って行った。
…本当は見えなくなるまで見送りたいけど…
二宮課長さんがいるから、すぐにソファに座りなおした。
すると、隣から含み笑いみたいなのが聞こえる。
えっ?と思って二宮課長さんの方を見た。
「あ、ごめん…。いや。ってゆーか、モテる話してたら、ボスが登場したから」
「ボス?」
「あいつ、すっごいモテるから。あいつを倒さないと、俺たちに平和はない、ってくらいに、女の子惹きつけるんだよ。顔が良いだけじゃなくて、女には優しいときたもんだ。すごいよねぇ…」
二宮課長さんが、もう見えないはずの雅治さんの背中を見るように、振り返って言う。
「一体、何人の女、泣かせてるんだろーね。……憎たらしいよ」
二宮課長さんが俺に向き直って、意味ありげに「ふふっ」と笑った。
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