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忠告 …1
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佐々木さんに「用事があるので」と言って駅で別れた俺は、河野さん指定のお店に、時間通りに向かった。
少し遅れて河野さんが来て、一緒にお店に入る。
そこは「ラッシャイませー!」と元気な声が飛び交う海鮮居酒屋だった。
隣のテーブルが見えないほどの高さの背もたれのあるボックス席に通されて、とりあえずビールを注文する。
お互い食べたい料理を頼んでから、すぐに来たビールで乾杯をした。
「お疲れさま」
「お疲れ様です」
カチンとジョッキを合わせた後、河野さんが勢いよくビールを流し込む。
「あー!月曜から飲むビールも美味しいわね」
そう言って幸せそうに笑った。
「美味しいですねー。…って言うか、河野さんって最初、ビールジョッキ持つようなイメージなかったです」
「あらそう?…ってゆーか、過去形?ふふっ。でも好きなのよ。こういうの」
また美味しそうにジョッキを傾けた。
ジョッキをテーブルに置いてから、フッと笑って俺を見る。
「とりあえず、本題から話そうかしらね?なにせ佐藤さんの顔に"気になる"って書いてあるし」
「えっ?あっ!いえ…その、スミマセン」
確かに、ここに来る前から、わざわざ社外で話すようなことって何だろうって、ずっと気になっていた。
そんなに顔に出てたのかと、思わず両手で頬を挟む。
そんな俺を見て、河野さんが複雑そうに笑った。
「こんなこと言われたら嫌かもしれないけど…佐藤さんって確実に女子力上がったわね」
「えっ?じょしりょく?」
何のこと?
「そうか…無自覚か…恐ろしい…」
河野さんが頭を横に振りながら、ため息を吐く。
「そう言う変化って、やっぱり小栗くんのためなのかしらねぇ?ただ、外にもダダ漏れってのがね…小栗くんも心配になる訳だわ」
「はぁ…」
何のことか分からないけど、適当に相槌を打つ。
「あ。あの、小栗さんが俺を心配って?」
「んー。今回ね、出張行く前に『佐藤くんを頼む』って言われたのよ。…まぁ、彼に心配の種を蒔いちゃったのは私なんだけど…」
河野さんがお通しの貝の佃煮をつつく。
「心配の、種ですか?」
「そう。それが本題というか…あれなんだけれども…。うーん。どう言ったらいいのかな?」
河野さんが箸をパチリと置いた。
「結論から言うと、二宮課長には気をつけて欲しいの」
河野さんが真剣な顔で俺を見る。
「二宮課長、さん…ですか?」
「そう。…簡単に言うと、彼、手癖が悪いのよ」
「手癖?」
河野さんが何かを思い出すように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「何ていうか…可愛い子を見たら、手を出したくなるらしいのよね。あの人。…病気よね?一種の。…本人は、寂しがり屋とか都合のいいこと言ってるけど…」
「はぁ…」
なるほど、やっぱり女の子好きだったんだ。
でも、それと俺と、どう言う関係が?
「その、問題は…可愛い子、って言うのが…性別を問わないらしいのよ」
「…え?」
「つまり、佐藤くんも、狙われる対象ってこと」
河野さんのビックリ発言に、一瞬、思考が停止した。
えっ?
どう言うこと?
可愛い子、対象なんでしょ?
「まさか自分が、って顔してるけど…佐藤さんが二宮課長に多少なりとも気に入られてるのは間違いないわ」
「そう…ですかね?」
「うん。無自覚かもしれないけど…最近の佐藤さん、本当に可愛いもの」
河野さんのその言葉に、顔が赤くなるのを感じた。
少し前までは、雅治さんにだけ可愛いって言われたいと思ってた。
でもこうして、河野さんに可愛いと言われて、あまり嫌な気分じゃない自分がいる。
なんだか、照れ臭いような感じ。
あぁ、俺、自分が気付かないうちに、何か変わって来てるんだ。
そんなことが頭を掠めた。
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