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二人一緒 …1
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店員さんに変な事聞かれてないかと落ち着かなくて、遥香さんが去った後に俺たちもすぐにカフェを出た。
「まさか、姉貴が認めてくれるとは思わなかった…」
お店を出てすぐ、雅治さんがそう呟いた。
「うん…緊張したぁ…」
フッと笑った雅治さんが、俺の背中をポンと叩いてくれた。
外でこうやって触れてくれるのは珍しい。
「ところで、それ…何受け取ったの?」
雅治さんが、遥香さんから受け取った無地の紙袋に目をやる。
「ん…。ちょっとね」
それ以降、雅治さんは口を濁してしまったので、俺も深く追求するのはやめた。
駐車場が見えてきたところで、雅治さんがこんな事を言い出した。
「これから、付き合って貰いたいところがあるんだけど…」
「えっ?…どこっ?」
また誰かに会うのかと、心臓がドキドキと音を立てた。
「思い出の場所」
「思い出の?」
「着けばわかるよ」
その後、雅治さんはまた無口になってしまった。
あれ?
雅治さんは、何でまだ緊張してるんだろう?
やっぱり、また誰かと会うのかな?
そう思いながら、車に揺られて数十分。
着いたのは、いつか来た…水族館だった。
河野さんと雅治さんと…3人で来た水族館。
車駐車場に車を停めると、車から降りた雅治さんが何処かに向かって、歩き出す。
「水族館、行くの?」
「いや。…あ、いや、行きたいなら行ってもいいよ。でも、その前にどうしてもクリアしたい事がある」
「あっ、別に水族館に行きたい訳じゃないけど。…クリアって?何?」
「ん…」
雅治さんが遠くを見た。
目線を追うと…あの日、俺と河野さんで乗ったジェットコースターが見えた。
「俺、絶叫系、苦手なんだよ」
「あ、前も、乗らなかったね」
「そう。…実は俺、子供の頃に目の前でジェットコースターの事故を見て……それから、怖くて乗れなくなったんだ」
「えっ⁈事故⁈」
「うん。…そう」
ジェットコースターの事故と聞いて…
ホラーな映像が頭に浮かぶ。
「ケガ人とか…出たの?」
「ん…そりゃ…」
雅治さんが眉間にギュッと力を入れた。
うわぁ…
確かに、そんなのを見の前で見ちゃったら、怖くて乗れなくなるよね。
「そっか…」
「ん…。でも、あの日、陸と河野の二人でジェットコースターに乗りに行くのを、俺一人で見送ったのが、今だに心に引っかかってて」
「え?」
あの時のが?
なんで?
「あの日、二人がジェットコースターに行った後…このまま二人が戻って来なかったらどうしようって不安になった。二人で帰るならまだしも…もし事故にあったりしたら、と。…自分が陸について行けなかったこと、とても後悔したんだ」
雅治さん…
「たかがジェットコースターって思うかも知れないけど…俺はどこでも陸と一緒にいたい。それに、陸と一緒なら何でも乗り越えられる気がするんだ」
そんな話をしながら、発券機に到着した。
ジェットコースターの券を二人分購入する。
ジェットコースターの列に並ぶと、前に並んでいた女性グループが色めき立った。
けど…
雅治さんの般若みたいな顔のせいか、特に声はかけてこなかった。
「あ…あの…。そんなに…アレなら…無理しなくてもいいんじゃ…?」
雅治さんが、あまりにもピリピリと緊張したオーラを出しているので、思わずそう声をかけた。
「いや…今日しかないんだ…」
そう言って、ゴウゴウとジェットコースターが動くのを、目で追っていた。
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