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手のひらから始まる …6
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「未来のことは分からない…だけど、俺は陸との事で後悔したくはない。今のこの関係を、曖昧なものじゃなくて、確かなものにしたい」
雅治さん…
「無理に、良い返事する必要なんかないんだ。もちろん、保留でも良い」
俺は何をどう伝えればいいんだろう?と、雅治さんの真剣な顔を見ながら考えた。
俺はさっき、雰囲気に流されて、プロポーズ仕返したんだろうか?
…いや、それは違う。
結婚っていうワードは、俺の中でずっとしこりみたいに存在していた。
雅治さんは、いつか俺じゃない誰かと結婚するのかな?とか、考えなかった訳じゃない。
だって、男と男では、結婚出来ないんだから。
俺と…雅治さんでは、結婚、出来ないから。
でももし、そうできる未来があるのなら…
俺は迷わずその道を選びたい。
だって、雅治さんが他の誰かと結婚するとか考えるのはとても辛いから。
俺も…雅治さんを知った今では、他の人との未来なんて想像出来ないし。
俺がごちゃごちゃ考えてなかなか口を開かずにいたら、雅治さんが身体を離して、さっきお姉さんから受け取った紙袋を足元から取り出した。
袋の中に手を入れて、中からティッシュ箱くらいの大きさのずっしりとした白い箱を取り出す。
「今、このタイミングで出すのもアレだけど…」
そう言って、その白い箱を開ける。
すると中から、さらに箱が出てきた。
真っ赤な箱。
薄明かりでも分かる、高級そうな箱だ。
その箱の上に…何かのマークがキラリと輝く。
そのマークが何かを確認する前に、指輪の入った箱を開けるような感じで、俺にその中身を見せるように、雅治さんがその蓋を開けてくれた。
「わ…!これ…っ」
箱と同じ赤い色をした台座に、時計が二つ並んでいた。
これは…ペアウォッチだろうか。
シルバーのバンドに、黒っぽい文字盤の時計と、白い文字盤の時計だ。
デザインは同じだけど、白い方が少し小さめに見える。
「もともとホワイトデーのお返しにと思って時計を注文したんだけど…。途中で気が変わってペアにした。
これを…婚約指輪の代わりとして、受け取って欲しい」
「えっ⁉︎」
婚約、指輪?
「俺は、本気だよ。ちゃんと考えて、出した結論だ。この日のために…陸に受け取ってもらいたくて…準備、したんだ」
雅治さん…
時計をよく見ると、誰でも知っているスイスの時計ブランドの物だった。
1つで数十万円するような代物だ。
「こ、こんな高そうなもの…っ」
ペアだといくら?なんて考えたら、こんな物俺がもらっていいのか、不安になって来る。
「俺は、これから先もずっと、陸と同じ時を刻んでいきたい。そういう理由で時計を選んだんだよ。…だから、すぐ壊れるようなものじゃダメなんだ。な?…だから、値段は気にしなくていい。陸。ちゃんと考えて…これを受け取ってほしい」
雅治さんが、白い文字盤の方の時計を取り出した。
泣きそうに、なった。
雅治さんが真面目に俺のこと考えてくれてることが胸に響く。
胸の中のしこりが、解けて消えていく気がした。
涙をこらえて、必死で声を絞り出す。
「お、俺っ…考えた。…ってゆーか、考えるまでも無いよ。俺も、ずっと雅治さんと一緒にいたいから。雅治さんと一緒にいることは、前から夢見てた事だから。…俺も、本気だよ。ちゃんと…覚悟は出来てる」
そう返事すると、雅治さんが嬉しそうに微笑んで俺の手を取った。
「ありがとう」
その声はとても小さくかすれていて、心なしか震えていた。
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