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【番外編】岡本賢治の葛藤 …4
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気不味い沈黙が嫌で、とりあえずさっき気になった事を口にしてみた。
「その時計って、小栗さんから?」
「え?…あ!うん。そう」
「ふーーん」
その「ふーん」に、特に意味はなかったんだけど、さとちんはそれをネガティブに受け取ったのか、慌てて次の言葉を付け加えた。
「あ、バレンタインのお返しに、ってゆーか。そんな感じ?」
「え?ホワイトデーに?そんな高級な物を?」
「えっ?あ…うん…まぁ」
もしかすると、さとちんもバレンタインに高級な物をあげて、そのお返しかな?と思った。
けど、さとちんはそんな風に貢ぐやつじゃないよなぁ…
「小栗さんて、高級取りなんだな」
複雑な心境故か、ちょっと言葉がキツくなる。
「えっ?いや、そんな事ないよ!…いや…その…これはそんなんじゃなくて…」
さとちんが口ごもる。
そんなんじゃなくて?
何なんだろう、と思った時…
「おまたせー。モヒートだよ」
マスターが、ロンググラスのカクテルを俺たちの前に置いた。
砕いた氷とミントとライムの緑が、良い具合にキラキラしてキレイなカクテルだ。
「いただきまーす」
カクテルを口に含むと、爽やかなミントの香りが鼻から抜けて、気持ちまでスッキリする感じがする。
「美味しいね」
「うん。マジうまい」
そのカクテルのおかげか、さとちんの言葉にも、壁を作らず素直に返事出来た。
「このミント、うちで採れたんだよ」
マスターがニコニコしながらそんな事を言った。
「えっマスター、こんなの育ててるの?」
マスターにそんな趣味があったとは!
「いやいや、奥さんがね。…うちのベランダ日当たり良いからって」
「うおー!奥さんかぁ!マスターからそんな話聞く日が来るとは!で?新婚生活はどうスか?」
「あはは。それはナイショ」
マスターが、ミステリアスな笑みを浮かべた。
「そういや、俺、秋に結婚決まりました!マスターのおかげです!その節は、色々と相談に乗って頂きまして…」
ペコリと頭を下げる。
「いやいや…ってことは、あの時の彼女と上手くいったんだ?」
マスターがニヤリと、笑った。
「う…まあ、そうッスね。おかげさまで…」
そう、おかげさまで、彼女とのエッチは上手く行くようになった。
ふと、そういやあの時からさとちんは小栗さんと出来…てた…っぽいよなー…なんて思い出す。
「あれ?佐藤くん、良い時計してるねー!もしかして、プレゼント?」
マスターがさとちんの時計に目を留めた。
「ははっ。そう…です」
さとちんが、すこし頬を染めて笑った。
あー。複雑。
男友達のこういう表情が「可愛く」見えるのとか。
マジ、複雑。
「なに?佐藤くんの誕生日とか?何か記念日?」
マスターが、俺がなかなか聴けなかった事をさらりと聞く。
やっぱ、人生経験豊富な人は違うわー…
「いえ。あ、その、一応ホワイトデーにもらったんですけど…」
「けど?」
「あの……婚約、指輪の代わり…と言うか、何と言うか…」
…え?
「えっ?え?…なにっ?ちょっ?こん、こんっ」
「あはは。岡本くん!落ち着いて!」
そんな事言っても!
何でマスター、そんなに冷静なんスかっ?
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