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【番外編】秋吉菜々子の観察眼 …1
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昔、好きな人がいた。
その人は仕事に対して一生懸命で、仕事を離れるとその厳しさは何処へやらって感じでとても優しくて。
少しミステリアスな部分がとても魅力的に見えて、憧れから好きに変わるまで、そう時間はかからなかった。
告白したいと思ったのは、その彼が何となくいつもと違う雰囲気をまとったある日。
何か、私の知らないところに行ってしまう気がして、それを繋ぎ止めたくて…
告白するのを決めた。
いつ告白しようかと悩んでいる間にも、彼はどんどん変わっていく。
短かった髪も、伸ばし始めて…
何が彼をそんなに変えるのか、気になって仕方がなかった。
そんなある日、友達とお台場で遊んだ帰りに、変なナンパに捕まった。
逃げられずどうしようと泣きそうになった時に…
まるで王子様のように彼が登場してくれた。
私の好きな、佐藤さん!
もう、運命だと思った。
ただ…
彼の後にすぐ、別の王子様が登場して驚いた。
見た目完璧なその男性は、私達を助けてくれたことに変わりはないけど…
私達を助けたと言うより、佐藤さんを助けたように見えてしまったのだ。
その二人が並んでるのを見たとき、何か心に引っかかるものがあったから。
その違和感のようなモノの正体を確かめたくて、二人を足止めしたかったけど…
あっという間に二人は去って行ってしまった。
余談だけど、私は下に弟が一人、双子の妹が二人いる。
うちは親が共働きだったので、私がよく下の子の面倒をみてきた。
特に、双子の二人を相手するとき、本当に神経を使った。
とにかく、三人が泣かないように喧嘩しないように、いつも観察して気を使って日々過ごしていたら、いつの間にか他人の変化に敏感に気付けるようになっていた。
そんな特技のおかげか…お台場で会ったその日、佐藤さんがいつもと雰囲気が違うのはすぐに分かった。
それから後、職場の先輩の計らいで、佐藤さんとの飲み会をセッティングしてもらった。
そして、その日の帰りに告白しようと決めた。
決めた…んだけどね。
直前に、邪魔が入った。
それも運命と言わんばかりに。
先日お台場で佐藤さんと一緒にいた人が現れて…
なぜか一緒に飲む羽目になった訳だけど、ここぞとばかりに、以前感じた違和感みたいなモノを探ることにした。
彼の名前は、小栗さんと言った。
そして…違和感の正体はすぐに分かった。
あぁ、私ったら、何でこうも敏感に察しちゃうんだろう?
気付かないままだと良かったな…
自分の失恋を突きつけられて…心で泣きながら、みんなの前では必死で笑顔を貼り付けた。
でも、これは…何というか…
私の観察通りだとすると、二人はかなりもどかしい状況じゃないか?
私の好きな人を…今この状況を助けられるのは、私しかいないかもしれない。
自意識過剰かもしれないけど、そう思った。
佐藤さんは、この人のことが、好きだ。
そして、何かきっかけがあれば二人は結ばれる。
うん…
分かってる。
分かってたから。
佐藤さんが私に振り向いてくれないってことは。
だから、落ち着いていられたんだと思う。
そして思いついた。
もしも、ここで佐藤さんを応援したら、佐藤さんと仲良くなれるかもしれない。
彼女になれないなら、友達に…いや、せめて今より少しくらいは仲良くなりたい。
それを、私の新たな願いにしよう。
だから、私は行動した。
小栗さんと佐藤さんに、それぞれアドバイスを。
ハッキリと伝えなかったのは、私の意地悪。
私の、最後の悪あがき。
でも、そんな悪あがきも関係なく、二人は結ばれるだろうなぁ。
そんな、未来を見つつ。
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