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トモダチ8
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健太が射精したとほぼ同時に、洸も体をびくりと跳ねさせながら精を放ったようだった。
散々動き皺だらけになったシーツが彼の精液で濡れる様ですらどことなく健太の興奮を煽る。
しかし、熱を吐き出したばかりにも関わらず再度硬くなり始めようとするそれを制するかのように洸が首を横に振った。
「てめ…中に出すかよ普通!?…っ、早く抜け!」
先程までの甘さを含んだ掠れた声がもう想像出来ないくらいの、ほとんどいつもと変わらない洸の声に健太は我に返ったように小さく肩を揺らし、慌ててベッドサイドにあるティッシュを数枚取るとそれを宛てがうようにしながらゆっくりと肉棒を引き抜く。
その瞬間に結合部からどろりとした精が溢れ出し、健太は1度だけごくりと唾を飲み込んだ。
自分たちは愛し合っている恋人同士などではない。
ましてや男同士であり親友であり、この行為はただの勢いと気の迷いでしかない。
そう言葉に出さずとも、まるでそれを健太に再認識させるかのように、洸の態度はいつもと何一つ変わらないように見えた。
腰が痛い、腹の中が気持ち悪いと恨めしげに文句を言いながら汚れたシーツを体に巻き付け、力なく浴室に向かう後ろ姿も、どこか非現実的に思えてくる。
先程の乱れた姿は決して幻想ではない。
しかし、幻想だったのではないかと感じられるほどに、あれほど熱かった健太の体はすっかり冷たくなっていた。
「……俺たちは親友だ。こんな行為、深い意味なんかねぇ…」
浴室からシャワーの音が聞こえてくる。
それは、耳にこびりついて離れない洸の甘い声を忘れさせてくれる音のようだった。
頭の中で、小声で、何度も繰り返す。
これはただの気まぐれで遊びだと。
そう思わなければこの関係が崩れてしまうことに、健太はもう気付いていた。
忘れろ、全部。
これはただの気の迷いだ。
何の意味もない。
目蓋の裏に未だ焼き付いて離れない洸の汗ばんだ体も、整った顔が歪む様も、甘く引き攣った声も。
シャワーの音を遠くに聞きながら、全て忘れるべく健太は強く目を閉じた。
*
「俺も…目を閉じてなきゃ、何か変わってたのかねぇ」
8年前のあの日を境に吸うようになった煙草を唇から離すと、健太は灰皿にそれを押し付けた。
「…何の話?」
空になったグラスの中、溶けかけの氷をストローでかき混ぜていた洸が顔を上げる。
昔から喜怒哀楽が非常に分かりやすい彼が、珍しく感情の読めない顔で洸を見ていた。
しかしすぐに健太はいつもの人懐っこい笑みを浮かべてテーブルの上のメニューを開き、変わらず笑みを浮かべたままデザートのページに視線を落とす。
「いーや、何でも。それより、今度その美人の同期とやら紹介しろよ。遊び人のお前を本気にさせる奴ってどんなのか見てみてぇし」
「…まあ、今度連れて来るよ。俺の大親友の健太クンも、きっと気に入るはずだぜ」
大親友、という言葉に胸が疼く。
しかし8年前にそれを選んだのは紛れもない自分自身と、そして目の前にいるこの、大親友なのだ。
口元の笑みを絶やすことは無いまま、健太はメニューのチョコレートジャンボパフェと書かれた文字を指差すとニッと歯を見せて悪戯っぽい表情を浮かべた。
「よっしゃ、洸!これ一緒に食おうぜ!!」
昔から健太は甘いものが好きだった。
洸はそれほど得意ではないのだが、出会った時から何も変わらないように見える健太の笑顔に観念したように肩を小さく竦めると、近くを通った店員に声を掛けた。
程なくして3人前はありそうなほどの大きさのパフェが運ばれてくると周りの女性客の視線が自分達へと集中する。
大の男が巨大なパフェをシェアする姿は周囲の興味を引くのであろう。
しかし照れくさそうに頬を引っ掻く健太とは対照的に、洸はその視線は一切気にすることなくチョコレートがたっぷりと掛かったバニラアイスをスプーンで掬い上げその口内にゆっくりと放り込んだ。
「……甘ぇ」
そう言って困ったように笑う親友は昔から変わらず、格好良く、そしてやはりとても美しかった。
ほんと、敵わねぇ。
極小さな声でそう呟くと同時に健太はスプーンを手に取って勢い良くアイスを口に含み、得意げに笑みを浮かべた。
「甘ぇ!」
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