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体温2
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結局その書類を終わらせてからも洸は仕事を押し付けられ、やっと帰宅の許可が出た際には時計は23時を少し回っていた。
もう限界だ。明日が土曜日で良かった。
先程よりも頭がクラクラとして四肢が重い。
今すぐにこの場で倒れ込んでしまいたい程に。
しかし、そういう訳にもいかないのが現実だ。
熱く重い体を引き摺るようにしてオフィスを出る。
昼から何も食べていないはずなのに腹も減らない。
家に風邪薬のストックはあっただろうか。
上手く回らなくなり始めた頭を必死に回転させようとするが結局は何も浮かばなかった。
そこから、どうやって帰ってきたのか記憶が曖昧だ。
気付けばドアの前に立っており、その扉を開けた直後に洸の意識は深い暗闇へと沈んで行った。
*
「……あ……?」
洸が目を覚ますと、見慣れた天井が視界に広がっていた。
完全に記憶が抜け落ちている。
あれ。俺はいつ着替えてベッドに入ったんだった?
「良かった。起きた?」
聞き慣れた声の元に視線を向けると、和人が眉を下げ心配そうな表情で洸を見ていた。
水の入ったグラスと、綺麗に皮の剥かれたリンゴが乗った皿を手にした和人はホッしたように息を吐き出し、それらをベッドサイドに置いて洸の傍へと腰を下ろす。
「鈴村、帰ってきた瞬間に廊下で倒れたんだよ。……腹減ってないかもしれないけど、薬飲むためにちょっとでも何か口にしないと」
「……あー……悪い、迷惑かけた。 」
道理で記憶が無いはずだ。
いつの間にか身に着けているこの部屋着も、和人が着替えさせてくれたのだろう。
洸はばつの悪そうな表情を浮かべるが、和人はすぐに首を横に振り相変わらずの綺麗な顔で優しく微笑んだ。
「それより、気分は?リンゴなら食える?」
「ああ…ちょっとはマシかな。…食うよ、ありがとう」
先程よりは少し楽になったとはいえ、やはり体が怠く重い。
必死に腕に力を込めて上体を起こすと、和人が用意したリンゴに視線を落とし力なく笑みを浮かべた。
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