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はじまりの日1<×和人>
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「やべぇ、またやっちまった」
今月に入って何回目だろう。
鈴村洸(すずむらこう)は、疲労を表情に滲ませたまま左腕の時計へと視線を落とし、溜息をひとつ漏らした。
くそ、また終電逃した。
洸の在籍する営業部には、深夜1時を過ぎた今はもう彼の姿しかなかった。
大学を卒業してから、知る人ぞ知るこの大手アダルトグッズメーカーに就職して3年が経つ。
持ち前の社交性と要領の良さで入社以来営業成績首位だった彼は、今年に入って主任に昇格した。
昇格と共にどんどんと増える仕事は、外回り終了後でしか手をつける時間などなく、溜まりに溜まった事務作業に取りかかれるのは定時をとっくに過ぎてからだった。
そのため、ここ最近はほとんど終電間際まで仕事に追われている。
うっかり仕事に集中しすぎて終電を逃すことも、ここのところ良くあることだった。
「…はー…社畜って言葉が似合うよな、今の俺」
何とか休日出勤を免れているだけまだマシか。そう自分に言い聞かせながらも、連日の長時間労働はさすがに堪えた。
今日が金曜日で良かった、明日は少しゆっくり出来そうだ。
そんなことを思いながらスマートフォンを取り出して、もう一ヶ月以上連絡を取っていなかったお気に入りのセフレの名前を電話帳から探す。
男女問わず気に入れば誰とでも寝るバイである洸だったが、その中でも彼女は特に気を遣わなくて済むから楽だった。
彼女の名前を見つけると、迷わず電話を掛ける。
しかし、彼女はその電話には出なかった。
洸の口から再び溜息が漏れる。
癖のある柔らかな黒髪を乱暴に掻き上げ、素早く退社の準備をしてエレベーターへと足早に向かった。
駅前のバーでも行って、誰でもいいから引っ掛けるか。そんなことを思いながら到着したエレベーターへと乗り込み、欠伸をしながらスマートフォンへと視線を落とす。
しかし、真っ直ぐに1階に向かうはずのエレベーターは、何故か4階で止まった。…この時間まで同じく残業をしていた社員がいたのか。
確か4階はーー
洸が顔を上げたのと同時に、彼がエレベーターへと乗り込んできた。
開発部の主任である、田辺和人(たなべかずと)だった。
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