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◆今日の最下位は牡牛座です。1<×洸>
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その日は、洸にとって散々な日だった。
家を出る間際に、画面の中で可愛い顔立ちのキャスターが告げていた。
「今日の最下位は牡牛座のアナタ!今日はツキがないみたーい!何をしても上手くいかないかも〜?」
毎朝聞いているはずのぶりぶりとした声が妙に今日は苛つく。
相変わらず、洸よりも30分以上先に和人は出社をしていた。
リモコンの電源ボタンを押してテレビの画面を消すと、洸はジャケットを羽織り部屋を後にした。
占いだとか、スピリチュアルだとか、そんな類のものを信じたことはない。
ただ、その日は、「最下位」という言葉が何かの呪文のように繰り返し流れて、洸の頭から離れなかった。
休憩中、お気に入りのマグカップを手から滑らせて粉々にし、その破片で親指を切った。
ようやく完成した企画書は、いきなりパソコンがフリーズしたせいで全て一からのやり直しとなった。
一度怒ると手のつけられない課長に後輩がひどく叱られているのを助けるべくフォローを入れると、相当虫の居所が悪かったようで、代わりに洸が2時間近く怒鳴られ続けた。
今日の洸を、一言で表すなら、確かに「ツキ」がなかった。
壁に掛けられた時計の針が23時を指している。
営業部には、もう洸の姿しかなかった。
データが吹っ飛び、課長の説教に時間を取られ、自分の仕事は殆ど手をつけられていなかったから、結局こんな時間まで残らなければいけない羽目になったのだ。
今日は散々だ。さすが「最下位」なだけある、と苦笑してから洸は長い溜息を吐き出して、ようやく企画書を完成させるとファイルを保存してパソコンの電源を切る。
ああ、美味い酒が飲みたい。
洸は小さく伸びをして腕時計へと視線を落とす。
23時12分。
幸いにも今日は金曜日だった。
洸は足早に会社を出ると、いつものバーへと向かった。
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