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楽なのに気苦しい物。 ❻
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「ぅ……、、ん……はぁ…、ぁ、」
「……」
気恥ずかしいの度を超えた羞恥に、何かする度に謝り倒していた翔。
しかし返事のない部長との合間に出来た微妙な雰囲気に居た堪れず、遂に二人とも黙ってしまった。
する音は時折鳴る鎖の音と、仕事に集中している素振りを見せる部長の出す紙の捲った音。
翔は後者の有り触れた日常の音に耳を傾け、媚薬とエネマグラで火照る躰の熱を冷ましつつ際限無く高まる感度と快楽から抜け出そうとしている。
一方で、一ノ瀬の耳は前者の音と圧し殺したような吐息ばかりを拾い、仕事への集中は疎か目に映るはずの文字の列さえ追えてはいない。
「…ぁ…ぐっ、う、……はぁ」
「…」
一ノ瀬は男で欲情を抱くようなタイプでは決して無い。
しかしふと視線を下に向ければ、尻に棒を刺し鎖錠で四肢を拘束されるという、あられもない痴態を露出させられている部下が居て。
その肌が僅かに桃色に染め上げられているのを、その潜めた吐息が艶を増すのを、またそそり立つペニスから透明な汁が溢れるのを拘束された脚を捩り何とか隠そうとする伊勢谷翔という人間を、過剰に意識せずに居るというのは一ノ瀬には難しい話だった。
気が動転している、とでも言っていいだろう変な感覚。
翔からすればあからさまに冷え込む雰囲気に乾いた笑いを心の中で浮かべざるを得ない状況だ。
しかし一ノ瀬からすれば初めてそういう店に入った時のような無意味で乱れた興奮の抑えきれない感覚に身を削られているのだ。
ましてその状況を作り出しているのが見知った人であり、気楽な性格で自身を時折困らせていた目のかけている部下であり、そんな部下がいつものような人の良い冗談を一言も発する事なく只々その恥辱を受け入れているのだから削られるペースもその分早い。
もし、この興奮を生み出しているのが女であるなら一ノ瀬は遥か高みに居る上司の命さえ破って外に出ただろう。
しかし男であるから一ノ瀬はここに留まり余計な事を考える羽目になっている。
裸体を見る事自体は同性なのだからどうという事も無いことだ。
四肢を鎖で繋がれるという恥ずかしい状況は罰なのだと言われれば納得して、笑い飛ばしてやり過ごせばいいだけの事。
妙な薬でも混ぜられたのであれば心配し、介抱すればいい。
ただ、それだけの事。
「…あ、ぅ、……っ」
「……」
それが出来ないのは熱の妙に篭った声を上げる見知った部下の所為なのか、はたまたそれに一々反応を示す経験の少ない自身の所為なのか。
最早何も追えていなかった目を閉じ、一ノ瀬は心の奥底で反芻する。
心で問うても答えは出ない。
答えを出すべきなのに、脳内では視覚を切ったお蔭でより一層集中して時折喘ぐ声を聴いてしまう。
そんな自分を正すため、一ノ瀬は頭を振るがその先にあったのは例えようもなく無駄な興奮を覚える自身を酷く嫌う感情だけ。
翔も一ノ瀬もこの興奮と恥辱とが綯い交ぜとなった歪な雰囲気に憔悴し、また心の底から終わりを願う。
「…っ!?ふっ、ぅ、…なっ、何!?…っ、ぁあ!」
そんな状況を知ってか知らずか、赤城はポケットにあるリモコンに手を忍ばせ、そして、不敵な嗤みを噛み殺しながら、躊躇いもなく電源を入れた。
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