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楽なのに気苦しい物。 ❽
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”同性だから”分かる。
何処を刺激すればより良い快感が得られて、如何すれば快楽の深みに嵌ることが出来るのか。
最適なタイミングは自身が持つソレでの経験で熟知しているつもりだ。
それに、この場の雰囲気は確実にアブノーマルと言って差し障らないが、目の前の部下が涙目で頼む事は、やるかやらないかはさて置いて男ならば誰でもやってやれる内容だ。
だから、確かにその欲を満たしてあげることは出来るのだ。
「…い、の」
だから出来ないと言って逃げる事は出来ない。
ここで俺がヌいてやらないならば、それは、100%俺が拒否をしたからだ。
薬を混ぜられ得体の知れない罰を受ける俺の部下を助けることを、俺自身の嫌悪感で拒否するからだ。
尤も、人間というものは正義感に満ちた生き物ではない。
無理な物は無理で、生理的嫌悪感というものも確かに存在する。
それでも、技術的に出来ないわけでないのであれば、矢張り拒否の分類に入るのだ。
つまり、どれだけあるのか分からない俺の正義感と優しさを発揮して部下を救うのか、どれ程も無いが無いわけではない潔癖さと嫌悪感を優遇して部下を見捨てるのか、これはそういう部類の問題だという事。
「…ぁ」
仕方ないとやってあげるのか、呼吸と喘ぐような声の五月蝿い部下にそっぽを向いて耳と目を日光の猿のように塞ぐのか。
後者でもこの目の前の部下は文句など言わないだろう。
俺に頼んだ本人であるこいつでもやるかと問われたら、分からないのだから。
だから、やる理由に部下に嫌われることへの恐怖感を入れる事も間違っている。
即ち、やる場合は部下への憐れみと自身の優しさのみが理由だ。
そうあるべきで、それが正しい人の反応だ。
…そうあるべきなんだ。
「解った」
経験の無さを知識で埋めようと俺の考えを纏めた結果、何故か俺自身が部下を助ける事に言い訳染みた感情を持っていることしか分からなかった。
「解ったから」
鎖、薬、吐息、それらが生み出す言い知れない興奮と静寂の中に微かに含まれるバイブらしき棒の音とが内合し、部屋を包んでいる。
俺への信頼で恐怖が払拭されたか、或いは著しく判断基準が可笑しくなってしまったのか、解ったと言った俺に静かに泣き喚いていたのが嘘のように安心しきった伊勢谷は全てを委ねた。
「…気が済むまで」
良い上司でありたい俺は仕方無しに部下を助けた。
結果だけを見てそう誤魔化せるならそれで良かった。
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