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片思い
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◇◇◇◇◇◇◇
あの日玉城梓音とかいう変態ビッチにあられもない姿のまま音楽室に放置されたおかげで学校中で噂の的になった
近くを通った男子生徒に助けてもらい、流石にあの人の名前なんて出せないしだからって俺が好きこのんであんなことしたわけでもなくて
困った俺は知らない人に急になんて嘘もバレバレな言い訳しかつけなかった
「かーなた!」
大学の門をくぐって直ぐに名前を呼ばれて振り返る
茶色いふわふわな髪を揺らして小柄な女の子が俺の隣に駆け寄ってきた
「……あ、優梨」
「おはよ!……大変だね〜変質者に襲われた生徒で奏海有名人だね!」
「……笑い事じゃない、お陰で散々だ」
「うふふ、でもこれをきっかけに奏海のバンドが有名になったら私嬉しい」
「………変質者に襲われた生徒のバンド聞きたいって思うモノ好きがいたらの話だな」
「そんなことないよ〜!だって奏海の歌凄く素敵だもん」
俺の隣で嬉しそうに、緩くパーマのかかったミディアムくらいのボブの髪型を揺らして微笑むのは同じ1年の斎藤優梨だ
「奏海、次のライブはいつ?」
「確か今度はこの学校でやる」
「え?!そうなの?!」
「学祭でやることになった」
「わ〜!私、友達連れて絶対絶対見に行くからね!」
ぴょんぴょんと跳ねて朝から元気のいい優梨を見て癒される
屈託の無い笑顔が可愛いと思う
可愛いと思うのは優梨の見た目云々以前に俺が友達以上の気持ちを寄せてるからなのもあると思うけど
今日は朝から優梨と会えたしいい日かもしれない
そう思った時また遠くから俺を呼ぶ声が聞こえる
キョロキョロと辺りを見回すと優梨が俺のニットの袖を引っ張った
「…奏海、あの人じゃない?」
「え?」
指を指された先、
校舎の二階の窓から肘をついて優雅に俺を見下ろして手を振っているのは今一番見たくない相手
「…玉城先輩と知り合い?」
「……別に」
「…あれれ…あんまり得意じゃない?」
「好きか嫌いなら嫌いな分類だな」
「…奏海にそう言われるなんて玉城先輩って凄いね」
驚き何に感心しているのかわからない優梨へと視線を戻す
「優梨も先輩みたいなのがタイプ?」
「あははっ私?」
「そう」
「んー…どうかな?かっこいいとは思うけど、かっこいいと好きは別物だよね」
「へー良くわかんないな」
「うふふっ奏海らしい返事だね」
かっこいいって思うってことは
好きに繋がるんじゃないのか?とは思ったが優梨が違うというならそうなんだろう
しかし、本当に………
あの人どうにかならないかなぁ
はぁとため息をつきながら
優梨と歩き出す俺に向かい未だ名前を呼んでくる先輩に呆れた
「奏海は今日お昼は暇?」
「昼?…2限終えたら暫くは空いてる」
「本当?なら私課題あって一緒にやらない?」
「いいよ、俺もちょうどデッサンがあるから」
「よかったー!じゃあまた後で連絡するね!」
ニコニコと笑いながら手を振って優梨が女友達の元へと駆けていく
後ろ姿を眺めて俺も友人でありバンド仲間でもある、きりの元へ向かおうとしたとき後ろから誰かにのしかかられた
「かーなた」
「…………」
ふわっと甘い香水の匂いがする
何度か嗅いだことのあるその匂いと
誘うような甘い声に自然と眉間にシワがよった
「離れてください」
「ねえ奏海〜今のこ誰?彼女?」
「関係ない」
「えー俺には冷たいのに今の子には優しいんだね〜」
「あんたに俺が優しくする義理あるっけ?」
「先輩に向かってその口の聞き方ってどうなの?」
「先輩らしいことしてくれましたか?」
「また音楽室にちんこ出したまま放置されたい?」
ズルズルと肩にへばりついたまま楽しそうに話しかけてくる先輩を引きずっていたがその言葉に振り向き睨みつける
「次したら俺本当にあんたのこと嫌いになる」
「へえー!なら今はまだ嫌ってはないんだ!」
「先輩って何考えてんですか?」
「エッチなこと!」
ニコッと笑い首を傾げる先輩からは尋常じゃない色気が漂ってるけど生憎もう俺はうんざりだ
「なんで俺ばっか構うんですか」
「奏海ムカつくから」
「俺が先輩に腹を立てることがあったとしても、先輩に腹を立てられるような事した覚えないんですけど」
「そういうところがムカつく」
「……はぁ、一体どうしたら飽きてくれるんですか?」
「俺の下僕になったらかな」
「それは死んでも無いです」
「なら俺も一生このままだね」
「………先輩いい加減にしてください」
首に巻きつけられた腕を振りほどいて一際強く言いつけると先輩はぴょんっと後ろに一歩下がり俺を嘲笑うようにしてみてくる
「怖いな〜いいじゃん、奏海も気持ちかったろ?」
「あんなの動物として自然なことで深い意味なんてないです」
「ふーん、でも2回もイッてた」
「……先輩さ、ああいうのしない方がいいんじゃないですか」
「…………」
おちょくってくる先輩のペースに乗せられて話したらまたからかわれて終わりだ
深呼吸をして心を落ち着かせると真っ直ぐ先輩の目を見つめた
「…別に先輩が誰と何して気持ちよくなろうが、どうなろうが構わないけど。あんたのこと本気で好きな人とか大切に思ってる友達とかはあんたが自分の体大事にしない度に悲しむんじゃないんですか」
「……俺に説教してるの?」
「説教てより…一般常識」
「一般常識てなに?何が一般で何が異常なわけ?」
「………だから、俺は先輩とそんな議論をしたいんじゃなくて、単純にもっと自分の体大切にしろって言ってるんだよ」
「…………」
「…もし俺が好きな奴がそんなことしてたら俺はきっと嫌だから…悲しいし……出来ることあんならするから自分を大切にして欲しいって思う」
「………別に俺が誰とエッチしようが関係ないじゃん奏海には」
一瞬下を俯いた先輩が少しだけムッとして俺を睨みつける
「そうですね、関係ない……でも知っちゃったから一応注意しただけです」
「………そういうの俺嫌い」
「え?」
「そうやって優しさ売ってくるやつ俺嫌い、何言ったって気持ちよかったら結果楽しいだろ?奏海も何だかんだ言って楽しんでた癖に」
「先輩……」
少しだけ距離のある先輩と俺のあいだに何か大きな壁が見えた
もうきっとこの人に何言ったって聞きやしないだろうし、俺は別にこの人と友人でも親しい中でもないんだ
ここ迄言って分からないならこれ以上言うことはもうない
「……………」
「もういいです、好きにしたらいいですよ俺はあんたとは他人だしね、じゃあ失礼します」
さっき迄の威勢はどこへ行ったのか俯く先輩に背を向けて歩き出す
なんか先輩って接し方を知らない子供みたいだ
独り善がりで不器用で構って欲しくて
脳裏に従兄弟の女の子が思い浮かんだ
ハタチ過ぎて中身がそれってのもなぁ〜
なんてこと思いながら俺はクラスへと向かった
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