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89 京介side
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「時正宗様は、これ以上のことも知っているんじゃないんですか?」
「まあ、な。
お前んとこの霧ヶ峰にも看守をやっていた時のことを聞いたから。」
沈黙。
霧ヶ峰の時と同じだな。
なんて、そんなことを考えていないと頭の中がこんがらがってしまいそうだった。
「大体のことがわかった。
お前と優が、昔そういう関係だったことも。だから、この間あった時にあんな…キスとかしたってことも…。」
「それはちょっとまた事情が違うんですが…。」
と、69番は呟いた。
「ひとつだけわからないことがある。なんで、優に、『絶望したら楽になれる。』なんて言ったんだ?」
これまで発言権があると言ってからは俺の問いには間髪入れずに答えていたけど、初めて、少しだけ間をあけてから言った。
「僕ら奴隷は、期待とか夢とかもっちゃいけないんですよ。
いくら頑張っても、借金を返して出られるわけじゃない。稼いだものは全部会社に入る。
俺たちには自由なんてものはない。
ここからでるためには、また別の、他の誰かに買ってもらうしかない。
…買われるってそういうことなんです。
だから、そういう買われることもないのにただただ使われるだけの見定めは一番奴隷たちが嫌いなことなんです。
でも、買い手からしたら壊れても自分のものじゃないから構わないし、長持ちさせる必要もない。いろんな子たちを少しずつ味見できる。
需要と供給が一致してないんですよね。」
儚げに微笑んでいるその姿は、やはり優とどことなく似ていた。
「…だから、もう、そういう感情といった感情を捨ててしまえば、楽になれると思ったんです。
俺は、そんなことを考えつくくらいだから、まだまだ壊れないって自分でわかってたけど…。
それでも、あいつは、もう壊れかけてた。このままじゃもう…。
だから、そういったんです。
とある人の受け売りなんですけどね。」
69番は、また苦しそうに笑った。
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