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93 霧ヶ峰side
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今、あの時に手に入れることのできなかった、横から取られてしまった、この世の全てに絶望したような儚さや目を離せばどこかへ消えてしまうような危うさを兼ね備えた美しい少年が、俺の屋敷にいる。
その事実だけで、俺はすごく嬉しかった。
あの時先輩に買われてしまってから、本当にいろんなことがあった。
やっと、やっとここまで来た。
「優さん。って俺も呼んでもいいのかな?」
優は、俺と目を合わせずに首だけを縦に動かした。
「ありがとう。嬉しいな。」
嘘だ。こんな先輩がつけた『優しい』なんて字は似合わない。
完全に俺のものになったら、ちゃんと新しい名前もつけてやろう。
先輩は、すごく変わった人だった。
先輩が生徒会長をしていた頃は、冷血、冷静、そんな言葉が似合う憧れの人だった。
同級生の圭介からの話では、自分にだけは少しは微笑みかけてくれるという話を聞いても信じられなかった。
実の弟でさえもそんななのだから、もちろんのこと、友人なんてものはなかった。
いるのは、『時政宗』に興味ある取り巻きだけ。
でも、そんな取り巻きにすら、先輩はいないものとしていた。
先輩は、常に一人だった。
……なのに。
先輩のことを知り、尊敬し、先輩のようになりたいと思って生徒会長に立候補したはずだったのに、気付いた時には、先輩は『憧れ』から『疎むべき存在』に変わっていった。
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