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第64話
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「よっ、と。」
彼の掛け声で、くるっと宙で一回転。フライパンに着地して、さっきまで下だった面が上になる。綺麗な薄茶色の焼き色、ふっくらと少し厚みのあるホットケーキ。
「いい匂い、美味しそう。」
「和、皿を取ってくれ、」
「うん。」
彼の隣で皿を持ってスタンバイ。両面とも焼けた熱々のホットケーキが皿に乗る。
「熱くないか?」
次のタネを流し込んで、皿を持ってる俺を心配そうに見る蒼さん。
「大丈夫。あったかくて、気持ちいいくらい。」
11月の朝の肌寒い室内、皿の熱を感じながらテーブルへ運ぶ。あ、飲み物も用意しないとね。
「蒼さん、ホットコーヒーにする?紅茶にする?」
「んー、和は?」
「カフェオレ。」
「じゃ、ホットコーヒー。」
「ブラックだよね。」
「ん、」
蒼さんがホットケーキを焼く横で、インスタントの粉末コーヒーを2人分のカップに入れてお湯を注ぐ。俺のには半分位注いで、牛乳を入れてレンジでチン!
カップを2つ持って運ぶタイミングで、彼も湯気を立てる皿を手に持った。
「よし出来上がり。」
「わー、食べよう。」
ローテーブルの前に並べた朝食。いつもの様に、ラグの上に並んで座る。
いただきます、手を合わせて蒼さんに感謝する。彼も手を合わせて、俺を見て微笑む。
「メープルシロップ無いから、蜂蜜でもいいか?」
「うん。バターと蜂蜜の組み合わせ好き。」
バターを乗せて、蜂蜜をトロリとかける。うわ、美味しそう!
「俺はバターだけでいいや。蜂蜜はちょい苦手。」
蒼さんはバターをポイっと乗せて、溶け始めたところをナイフでさっと広げると、手早く切ってパクッと口へ入れた。
器用に、流れる様に動く指先。ピアノを弾く姿を思い起こさせる、ずっと見ていたら彼と目が合った。
「冷めるぞ、」
「うん。」
彼を真似して、殆ど溶けてるバターをナイフで広げる。あんな風に滑らかに動かせない、綺麗に切れない、イメージと違う動き。
「うー、何で?」
ボロっとなってるホットケーキの欠片を、フォークに乗せて睨む。
「何が?」
「蒼さんみたいに上手に食べれないよ。何が違うの?」
「さあ…、でも俺と和が全く同じ動きや考えだったらつまんないだろ。違うから補い合う事も出来る。」
蒼さんの手が滑らかに動く。切り取った理想的な四角、バターと蜂蜜のホットケーキを俺の目の前に差し出した。
「ほら、」
「あーん、」
口を開ければ甘いホットケーキの欠片が転がり込む。
「美味しい、美味しい。」
ぱくっ、
俺が持ってた、ボロボロホットケーキが乗ったフォークを咥える大きな口。
「ん、蜂蜜も中々イケる。」
「うふふ。補い合うっていいね。」
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