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黄金の王妃・15
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ベッドの端に座らされ、傷の1つ1つを確かめられた。
血は止まってるけど、刀傷って案外深くて、どの傷もまだじんわりと痛い。
まず右手、そして……左腕。王様の温かい指が傷の周りをそっとなぞり、傷口に唇を寄せられる。
「んっ」
小さな痛みに、びくっと手を引こうとするのを、王様は許さない。
「痛むか?」
静かに訊かれると、首を振るしかできなくて、大きな悲鳴も上げられなかった。
べろりと手の甲を舐められ、指の先を口に含まれる。
「あっ……」
舌を感じてるのか、痛みを感じてるのか分かんない。
手首、ヒジ、そして腕にある傷のとこまで、すうっと這わされる唇。声を我慢して息を詰めると、優しく寝台に押し倒された。
胸には傷がないのに、丹念に押し撫でられる。
乳首を舐められ、そこを甘噛みされて背中を反らすと、脇腹と背中にある傷が痛んだ。
「あ、ああっ、セレム様……っ」
身悶えて、手を伸ばす。
服を着たままの王様の背にしがみつき、シャツを掴むと、ようやくそれを脱いでくれた。
温かく、たくましい胸、すべらかな至高の肌が現れる。その温もりの中に包まれた瞬間、なんでかぶわっと涙が出た。
ひっ、と吸った息が、嗚咽に変わって漏れていく。
温かい。大きい。触れ慣れた背中の広さを確かめ、もっと近付きたくてしがみつく。
「セレ……っ」
名を呼ぶと、頭を撫でられて顔を覗き込まれた。
泣き顔を見られたくなくて両手で覆うと、手首を掴まれて開かれる。
ただでさえみっともないのに、見苦しい泣き顔、晒したくない。「いや……」と訴えて身をよじると、深い声で名前を呼ばれた。
「アイタージュ、泣くな。もう大丈夫だ」
「うっ……」
大丈夫なのは分かってる。分かってるけど、分からせて欲しい。
返事もできずに嗚咽を漏らす。整った顔を見たいのに、涙で滲んでよく見えない。
「よく頑張った」
嬉しい言葉にも余計に泣けて、オレはただ、首を振った。
欲しいのは言葉じゃなかった。
強く抱いて欲しい。体の奥の深いとこまで、王様の存在を刻んで欲しい。
怖かった。寂しかった。不安だった。死ぬかと思った。死の間際に王様を想って、もう会えないんだと諦めた。
けど間一髪助かって――再び、この腕の中にいるのに。どうしてそれだけじゃ足りないんだろう?
大きく温かい手のひらに、優しく髪を撫でられる。
「王妃がこんな泣き虫じゃ困るな」
優しい笑顔での、意地悪なセリフ。
大きくしゃくり上げると、「悪かった」って口接けられた。
残りの服が脱がされて、脚の間に性急な手が這わされる。
もう、意地悪はされなかった。
「痛むようなら、すぐに言え」
静かな命令に、こくんとうなずく。
寝台に深く沈められ、覆いかぶされて唇で唇をふさがれる。
例え痛くても、傷が開いても、そうと訴えるつもり、なかったけど――王様は強く優しく抱いてくれたので、それは全部杞憂に終わった。
体の奥深くまで貫かれ、「ああっ」と悦びの声を上げる。
ゆっくりと抜き差しが始まって、嬌声の中に嗚咽が消えた。たくましい背中に両腕を回し、オレだけの王様の愛を受ける。
オレは1週間ぶりに吐精して、それからゆっくりと意識を手放した。
心地よい快感に包まれて、全部が闇の中に落ちる。
この1週間、不安で不安で眠れなかった。何度もイヤな夢を見て、広い寝台の上で1人、月を眺めて夜を過ごした。
王様はすごい。
王様は優しくて、強くて温かくて、オレにいつも穏やかで優しい幸せをくれる。
目覚めると朝で。1週間ぶりに熟睡できたと悟って、改めて王様の素晴らしさをしみじみと思った。
傍らには、ぐっすりと眠ったままの王様の姿がある。
王様の寝顔を見たのは、初めてだった。
初めてこの腕に抱かれてから、それ程長く経った訳じゃない。でも、あの日から今の今まで、本当に1度も見たことがなかった。
毎晩、なかなか寝かせて貰えないせいかも知れない。
オレがいつも、熟睡してるからかも?
でもとにかく王様は、いつもオレより早起きで……オレが起きる頃には、もう剣の稽古を済ませた後だったり、閣議の最中だったりもした。
それなのに……今日は一体どうしたんだろう?
オレをゆるく抱いたままで眠る、王様の寝顔をまじまじと見る。
安らかな寝顔。でも、端正な目の下には、よく見れば濃いクマができてて、ひどくお疲れのようだ。
考えてみれば、王様だって馬を走らせての長旅で、大変だったに違いない。
子供みたいにみっともなく泣いて縋って、抱いて欲しいってワガママ言ったりして、オレ、なんて恥ずかしいことをしたんだろう?
大きくて、堂々としてて、背筋を伸ばし、胸を張り、大股で歩く王様。
優しくて情に厚くて、でも必要があれば、冷徹に剣をふるうこともできる王様。
聡明で勇猛で、美しく完璧な「くろがね王」。
「セレム様……」
そっと声を掛け、 無精ひげの生えた顔に、恐る恐る指を伸ばす。
なりふり構わず駆けつけてくれたのなら、嬉しい。
オレにとって、王様はかけがえのない唯一の人だけど……王様にとってのオレも、そうであって欲しい。お世辞じゃなくて、「自慢の王妃だ」って心から言って貰えるようになりたい。
どんくさくて、みっともなくて、頭も要領も悪くて、踊ることしか取り柄のないオレだけど。精一杯勉強して、頑張ろうと思った。
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