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<ProloguE>
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起床。
いつも通り、コンポの電源をいれると自動的に音楽が流れ出す。
ショパンのノクターン第2番だ。
とても心が安らぐ。
自然と目覚めもすっきりして、俺は布団を体からどけるとゆっくりと体を起こした。
今日は休日。
長かった高校最後のテストの疲れもこの休日を使って癒そうと。そういうことだ。
ベッドからおりると、リビングへと足を運ぶ。
床が冷たい。
足から伝わる温度で風を引きそうなほど俺の体から熱が奪われていく。
「はっくしょん!!」
身震いをしながらリビングのドアを開ける。
カーテンを閉め切って真っ暗だ。
「おはよう」・・・は言わない。
俺は独り暮らし。
物心ついたころには孤児院にいて孤児のみんなと仲良くやってた。
今は孤児院を出てバイトで何とか生活してる。
ご飯も自分で作る。
独りの寂しさには人一倍慣れていた。
「暗いなぁ・・・。」
カーテンを開けると外は真っ暗。月明かりだけが俺を照らした。
「えっ!?」
と、思わず時計を見る。
時間は午前2時45分を指していた。
「しまった・・・。」
テストで疲れた俺は部屋着に着替えてすぐにベッドで寝ていたことをすっかり忘れていた。
(おなかすいた・・・。)
部屋の電気をつけ冷蔵庫の扉を開く。
冷蔵庫の中は空っぽだった。
今から買いに行くのは面倒だが空腹は耐え難い。
少し時間がかかるが、コンビニまで歩いていくことにした。
リビングの電気を消しジャンパーの袖に通せばチャックを思いっきり上へと引き上げる。
財布をポケットに突っ込み、鳴らしたままの音楽を止める。
履きなれた靴を履く。ここまでは習慣だ。
しかし、今日に限って俺は家のカギを閉める事をしなかった。
それが俺の失敗だった。
街灯も人通りも少ない小道。
そこで俺は5人のサラリーマンらしきスーツの男とすれ違った。
横目で確認したがただ男たちは歩くだけ。話すことさえもしておらずバックもなにも持っていなかった。
(こんな夜中に何してんだ?)
不審に思ったが、寒さと空腹で俺はそれ以上の詮索をしないようにした。
まっすぐ行くとコンビニの強い光が辺りを照らす。
簡単に買い物を済ませるとそそくさと家へと引き返した。
今日の寒さはかなり身に染みる。
家のアパートの前まで来ると見慣れないワンボックスカーが停まっていた。
嫌な予感。
少し怖くなり少し小走りにアパートの階段を駆け上がる。
玄関をあけ小さく「ただいま。」と癖でつぶやいた。
「待っていましたよ。一条 優さん。」
独り暮らしで聞こえるはずのない男の声に俺は急いで足元から顔を上げた。
さっきのスーツの男の一人だ。
「な・・・何やってんだよ人んちで・・・。」
俺の声はかすれてうまく出なかった。
唾をのむ。今にも喉が閉まってしまいそうだった。
「いやいや、留守中に失礼しました。突然だが、君は"Eden"をご存知かな・・・?」
"Eden"その言葉を聞いた瞬間俺の中で一つの記憶がよみがえった。
―1週間前―
それは学校で授業中パソコンを使ったときだった。
「おい一条!」
「なんだよ。」
「おいみろよ。」
友人である松枝卓也は授業中でありながらインターネットを開いていた。
「おまえなぁ・・・、授業中だぞ?俺は単位を取るのに忙しいの。」
「まぁまぁ、ちょっとだからみろよ。お前に見せたらちゃんとやるからさ。」
その言葉を信じて俺は松枝のパソコンの画面をのぞき込んだ。
「秘密都市・・・エデン・・・?」
「そうそう。最近失踪事件とか行方不明とか多いだろ?あれは秘密都市エデンが関係してるって話だ。」
「そもそも秘密都市エデンってなんだよ。馬鹿馬鹿しい。ネットは嘘しかいわね・・・
「隣のクラスの二宮由紀。一家全員で居なくなったんだ。」
「は?」
その一言しか出てこなかった。
二宮由紀。成績優秀。テストで学年1、2を争う俺のライバル的存在だった。
「だって、先週まで・・・
「今日そのうわさが流れてんだよ。家の前に警察がいたんだってよ。家の中の状態がさっきまでいたような形跡で。一家全員いなかったんだって。まるで神隠しにでもあったみたいに。こえーーよなぁ。。」
あの時松枝が言ってた。
「ひみつとし・・・エデン・・・。」
気が付くと俺はそうつぶやいていた。
「ご名答。しかし正確にいえば都市ではない。」
「都市・・・じゃない・・・?」
「国だ。」
俺は恐怖で後退りすると急いで玄関のドアを開けた。
(さらわれる・・・殺される・・・!!)
片足だけ履いたサンダルを走りながら脱ぐと、転げ落ちそうになりながら階段を降りた。
(誰か・・・誰かいないのか!)
叫ぼうにも場所がばれてしまえば捕まる。
家に逃げ込もうにも、時間は午前3時くらいだ。
足の裏の痛みも感じないほどに俺は全力で走った。
走り抜ける影が俺についてくる。それすらも恐怖を感じた。
だいぶ遠くまで来たが、ご飯も食べず起きたばかりの俺の体力はそう長くはもたなかった。
細い路地の建物の物陰に腰を下ろす。
「なんでおれが・・・。」
「Why is it always me...」
驚くほど近くで聞こえる流暢な英語に俺は息をのんだ。
背後を見ると先ほどのスーツの男が1mもないほどの近さで立っていた。
「・・・・・・・っ!?」
俺は声も出なかった。
腰が抜けて立てもしない。
ゆっくりとこちらに近づいてくる男をただ見上げる事しかできなかった。
「なぜ、いつも私が。という意味だ。覚えておくといい。これから先他の言語は使うことになるだろうからね。それと・・・・。」
言い終わる前に男は俺の顔の前まで迫った。
「"Eden"まで少々時間がかかる。寝ておいたほうが短く感じられるだろう。」
途端に背後から鼻と口を何かに覆われる。
もがいている俺の体を頭痛が妨げる。
同時に甘い香りが一瞬だけ俺の鼻に入ってきた。
ここから俺の記憶は途切れている。
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