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痛みと嘘
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「葵!屋上行こうぜ!」
今日も潤が昼食に誘いに来た。
うん、と返事をして弁当を片手に二人で教室を出る。
身体が痛い…
一歩足を踏み出す度に腰や足に鈍痛が走る。
昨日母さんに殴られた所は醜い痣となって身体中に散らばっていた。
潤に気付かれないように注意しないと…
「今日は弁当なんだな」
「うん」
お握りだけにしたらまたおかずを分けてくれそうだし…
毎日人の弁当を分けてもらえるほど図太い神経はしていない。
朝を抜いてきたからプラスマイナス0だ。
「よっし、じゃあ練習すっか」
昼を食べ終え立ち上がる。
昨日と同じように潤が足を結び、支えるように俺の腰に手を当てた。
その瞬間、
「い”っ…!」
触れられた所から痛みが電流のように走り、喉から声が漏れてしまった。
やってしまった…
慌てて口を塞ぐがもう遅い。
潤は驚いたようにパッと手を離した。
「ごめん、なんか痛かったか!?」
「いや、大丈夫…なんでもない。
ほら、練習しよ。真ん中の足からな」
「お、おう…」
誤魔化すように練習を促すと、潤は心なしかさっきよりもそっと腰に手を添えてくれた。
だがテンポがずれると無意識にその手に力が入って痣を押される。
痛みに耐えるように下唇を噛み締めた。
バレたらいけない。バレたらいけない。
このくらいの痛み、なんてことない。
「…葵、汗かいてる。やっぱどっか調子悪いのか?」
僕の顔を覗き込みながらそう言われ、思わず目を逸らす。
「大丈夫」
そう言おうとした時、「ちょっとごめんな」と早口に言って潤が僕の背中を平手で叩いた。
「ひぐっ…」
そんなに力は込められていなかったが、今の僕には十分刺激的で、痛みに一瞬呼吸が詰まる。
「やっぱり…背中痛いんだろ。怪我してんのか?」
確信を持った潤の口調に、これ以上怪我の存在を隠すのは無理だと察した。
話すまで帰してくれなさそうな潤の様子を見て、内心で冷や汗を大量にかく。
「う、ん…ちょっと…階段から落ちて…」
咄嗟に嘘をついた。
だって言えないじゃないか。
昨日母親にバットで殴られ続けてました、なんて。
「階段から!?大丈夫なのか?
診てやろうか?」
「いやいい!診なくていいから!」
必死で断る僕を、訝しげな目で見つめる潤。
睨み合いに折れたのは、潤だった。
「…じゃあ、どこなら痛くないのか教えてくれ。
気をつけるから…」
「ありがと…この辺なら、痛くない」
痣のない腰の下辺りに潤の手を誘導する。
心配してくれている人に嘘をつくのは、思ってたより胸がズキズキと痛んだ。
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