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散髪
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「凄いもっさもさね!ちゃんとドライヤーかけてる?コンディショナーしてる?」
「い、いえ…」
「ドライヤーくらいはした方がいいわよ。でも元々の髪質は良いみたいだし、髪で隠れてた顔も綺麗だし目も大きい。切ったらきっと見違えるわ」
「は、はあ…」
椅子に座らされ、体に布を被せられた状態で、健人のお姉さんに髪を触られている。
この部屋には僕と彼女しかおらず、潤と健人は「出来てからのお楽しみ!」と追い出されてしまった。
健人のお姉さんはサバサバしていて、思ったことをすぐに口に出してしまうタイプのようだ。
物言いはハッキリしているが、根は優しそうな人だった。
「特に髪型の希望はないのよね?
じゃあ始めるわよ!」
ジョキジョキと遠慮なくハサミを入れられる。
店ではないので、僕の前に鏡はない。
今自分の頭がどんな状態なのかわからず、少し……いや、かなり不安だ。
だからと言って何か出来る訳でもないので、お姉さんの腕を信じて目を瞑った。
___20分後、、
「はぁい、できたわよ」
その声に目を開く。
「うわっ…」
足元には切られた髪の毛が落ちていて、その量の多さに思わず声を上げる。
「凄い量よね。今健が鏡持ってくるからちょっと待ってね」
「はい…」
大丈夫かな…髪ちゃんと残ってるかな…
いや、さすがに残ってはいるだろうけど…
肩についた髪の毛を払っていると、潤が部屋に入ってきた。
目が合って、きっかり3秒の沈黙。
え?何?
やっぱなんかおかしい?
どっかハゲてるとか?
顔に似合ってないとか?
しかし動揺する僕に潤が放った言葉は予想の正反対なものだった。
「すごい似合ってる…」
「当然でしょ?」
お姉さんがふん、と鼻で笑って胸を張る。
なんだ…可笑しくないならそうと、普通に言ってくれればこんな緊張せずに済んだのに…
ほっと息をつくと、そこへ少し遅れて健人が二面鏡を持ってやってきた。
「うわ!スッキリしたなぁ、葵!
ほら、見てみろよ」
健人が後ろから二面鏡を開いてくれて、手渡された普通の鏡を通して、髪を前から後ろまで見てみる。
そこに映る自分は、確かにガラリと印象が変わっていた。
ボサボサで量の多かった髪がスッキリ整っていて、頭が一回りも二回りも小さくなったようだ。
目にかかって鬱陶しかった前髪も程よい長さに切られて、視界が広がった。
「あ、ありがとうございます…!
こんなしっかりやってもらって…」
お代を払わないのが申し訳なくなるくらいだ。
しかしお姉さんは手を顔の前でぶんぶんと横に振った。
「こっちも練習に付き合ってもらったんから、お礼はいいわよ。
気に入ってもらえて良かったわ!
あ、でも将来私がお店持ったら、是非お客さんとして来てね!」
親指をグッと立ててウインクをされた。
本当に…いいお姉さんだなぁ。
こんな姉がいたら…なんて想像したってしょうがないけど。
人の温かさに触れて、自分も少し心が暖かくなって。
でも何故か、ほんの少し、胸が痛くなった。
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