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「あーおーいーくんっ」
なんで…なんであなたが、ここにいるの…?
校門に寄りかかる一条の姿を捉えると、足が地面に縫いつけられたように動かなくなった。
心臓の鼓動が耳に届くくらいドクドクと鳴り響き、嫌な汗がこめかみを伝う。
「なんでここに…」
ようやく声が出たのは何分後だっただろうか。いや、実際は数秒だったのかもしれない。
1秒が異常に長く感じた。
「ちょっと葵くんと行きたいところがあってさ」
そう言うと一条は僕に歩み寄ってきた。
ゆっくりと、一歩ずつ。
やけに間の長い靴音がカウントダウンのように聞こえ、恐怖を煽られる。
嫌だ…
どこに行くのか知らないが、どこであっても僕にとって最悪なところなのは間違いない。
行きたくない…
未だ前にも後ろにも一歩も動けずにいると、一条は僕の手首を掴み、引っ張った。
僕の足は引きずられるように前に進み出した。
周りの生徒が何事かと僕らを見てる。
どうしよう…
僕が今拒否したら?
大声を出したら?
後ろにある校舎に逃げ込んだら?
そうしたら、きっと今だけは逃げられる。
今だけは。
でも今逃げれば、帰った時もっと酷い目に遭わされるのは目に見えた。
引きずられていた足を自分から踏み出す。
これが、最善…
その時、
「葵!!」
右手を引く一条よりも強い力で左手を掴まれ、後ろに引っ張られた。
その勢いで一条の手が離れ、一歩踏み出した足が戻る。
僕の左手首を掴むその手は、
僕より大きなその手は……温かかった。
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