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松木亮の決心 (リョウside)
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もっちーは声を上げて泣いた。
抱きしめた細い肩は震えていた。
「もっと早く会えてたら良かったかもしれない」
そんなことを思った。
_____4時間前
大学の試験のためにバイトをしばらく休んでいた俺は、今日久々にもっちーとシフトが被った。
「久しぶりやね!」とノー天気に声をかけようとしたけど、もっちーの顔を見たとき、喉まで出かかっていた言葉は引っ込んだ。
2週間ちょっと会っていなかっただけなのに、 元々細かったその体は見て分かるほど痩せ細り、顔も酷くやつれていた。
更に胸がヒヤッとしたのは、その表情だ。
前から作り笑いで感情を隠すことがあったけれど、今はその曇りガラスがより不透明になり、何層にも重なったようだった。
本当の感情が心の奥深くに閉じ込められてる…
人は2週間やそこらでこんなに変わるものなのか。
少なくとも”何か”あったのは明白だった。
そんな彼をとても放っておけなくて、適当に嘘をついて家に招き入れた。
…何か悩みを抱えている?
それはいつから?
何が原因?
どこから聞くべきなんだろう。
どこまで聞いていいんだろう。
もっちーは初めて出会った時からずっと何か大きなものを抱えているようだった。
よく傷を作っていたし、傷が見えなくてもどこかしら痛そうに動いていることが多かったから。
俺はそれに何となく勘づきながらも、何も聞かなかった。
もっちーは、きっと聞いても答えてくれない。
デリケートなところは他人に軽率に踏み込まれたくないものだ。たとえ俺自身が軽い気持ちでなかったとしても、それを証明するのは難しい。
ガードの固い人に、無闇に突っ込んではいけない。
下手に探って警戒されたくなくて、俺はもっちーの抱えているものには触れないようにしてきた。
それが正しいのかどうかなんて分からないが、少なくとももっちーは俺を信用してくれていると思う。
十分に信用してくれたら、いつか話してくれればなぁ、なんて呑気なことを考えていた。
…でも、駄目だ。
このまま何もせずに放っておいたら、取り返しがつかなくなるかもしれない。
心の傷は、体の傷よりもずっと危険なものだ。
彼が今抱えているものは、以前と同じものだろうか。
それとも、今までとは違う、新しい要因ができたのだろうか。
とりあえず、聞かないことには何もわからない。
だから俺は、彼があの細い腕で抱えているものに、一歩踏み込むことにした。
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