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愚かな子
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「うわぁ、こりゃまた酷いね」
一条は僕を押し倒しシャツを捲ると、身体に散らばった痣を見て他人事のように言った。
一条が来てから母の暴力は比較的落ち着いていたから、こんなに痣だらけな身体をこの男に見られるのは初めてだ。
若干引いたような顔をしたのに、一条はそのまま僕の服を脱がせた。
母さんは襖一枚先の部屋で寝ている。
こんなところ見られたら今の不安定な母がどうなるか、想像もできない。
恐怖と緊張で抵抗できないのをいいことに、一条はスルスルと僕の下着まで取り払い、自分のズボンのベルトを外した。
「ねえ、お母さんに殴られる時何考えてるの?
葵くんも一応男なんだしさ、抵抗するなり逃げるなり、出来ないことはないでしよ?お母さん殴って逃げるってのも不可能じゃない。
それとも、実は痛いの好きだったりするの?」
腹にある一際大きな色をした痣を親指で強く押され、鈍い痛みが走る。
「っ、母さんを…殴れる訳ない、でしょ…」
痛みが好き?抵抗できるのにしない?
違う。
確かに母に抵抗することは物理的には出来るかもしれない。
でも…母さんを傷つけてまで逃げようとは思わない。抵抗すれば少なからず母が怪我をするリスクが生じることになる。
母さんを殴るくらいなら自分が殴られる方がマシだ。
それに僕が母さんから逃げたら、自分が傷つかない代わりに1人になった母が何をするかわからない。
これ以上、苦しむ母を見たくない。母を1人にしたくない。
その為なら、体の痛みぐらい耐えられる。
「ホントさ、馬鹿みたいに健気でいい子だよね、葵くん。自分は悪くないのに理不尽に殴られて、それで母親を恨まないなんておかしいよ。
ここまで来たら親とかどうとか関係ないだろ?
君の母親は、君のことを愛していない。
君がどんなに母親のことを想っても、向こうは振り向いてもくれない。
それなのに君はあんな女を母親だと思えるのか?」
一条の言葉が、壊れたレコードみたいに頭の中で繰り返される。
この男の言葉なんて、と無感情に流してやりたい。
でも今までほんの少し自覚して、心の奥深くに押し隠していたその言葉は、人に言われたことで現実味を増して、僕の心を抉った。
『僕は、母さんに愛されていない』
…それでもきっと、今だけなんだ…
いつか…いつか昔のような優しくて愛に溢れた母が戻ってくるかもしれない。
その日が来るまで、僕まで母さんから離れる訳にはいかないんだ。
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