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成績
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テスト休みが明けても、終業式とテスト返却で1日登校するだけですぐに冬休みに入る。
今日はその休みに挟まれた登校日だ。
テストと成績表が返されると教室は一気にざわついた。
潤は赤点を免れたようでガッツポーズをしている。
周りが落ち込んだり喜んだりしている中、僕は落ち込んでいる側の人間だった。
予想はしていた。
言い訳にしかならないが、バイトや家のこともあり、いつもより勉強に時間を取れなかったこと。そしてテスト期間中の連日の寝不足。
手応え的にも、1位どころか上位にも入ってないだろうと思っていた。
結果は13位。
周りに聞こえないよう、静かにため息をこぼす。
先生は僕に成績表を渡す時、苦い顔をした。
「望月、後で進路指導室来い」
「…はい」
クラスの皆がチラチラと僕と先生を見比べる。
普段僕が呼び出されることなどないので驚かれたのか、ヒソヒソと話し声が聞こえた。
潤が席に戻った僕に歩み寄ってくる。
「何かあった?」
「多分成績のことだと思う」
「下がったのか」
「うん」
「…もしかして、俺が勉強教えてって言ったせいで時間が…」
「潤のせいじゃないよ。原因は僕の自己管理がなってなかったことなんだから。今回色々あったのは事実だけど、潤はその原因に入ってない。
…じゃあ行ってくるね」
淡々と伝え、俯く潤を残して教室を出る。
…やっぱり、今までの関係と少し変わってしまった気がする…
前はこんなに気遣われている感じはしなかった。
僕が過去を打ち明けたからか、潤が僕に告白したからか…
どちらかは分からないが、どちらであっても打開策が見つからない。
どうすればいいんだろう…
以前のように、一緒にいるだけで心地良いような間になるには…
冷たい廊下を歩きながら、無意識に再びため息をつく。
進路指導室の前に着きドアを開けると、少し埃臭いその部屋には既に小田先生がいた。
「お、来たか望月。とりあえず座れ」
「はい」
先生と向かい合って座る。
「話っていうのは今回の成績のことだ」
「はい…」
「特待生の成績上位キープは必須… 3位か5位、悪くても10位以内には入って欲しいところなんだ」
分かってる。
だから今回の13位という結果はかなり酷いと言えた。
「来年の…奨学金は厳しいですか…?」
恐る恐る聞くと先生は難しい顔をした。
「お前の家はお父さんがいなくて大変だってのは知ってる。
今回、テスト前から体調悪そうだったし、最終日には倒れたって聞いた。
色々、無理してたんじゃないか?
いつもダントツで一位なんだ。一度くらい体調不良で成績が下がったって何とかなるさ。
お前は他の先生からの信頼も厚いからな」
先生の言葉にいつの間にか下を向いていた顔を上げる。
「それじゃ、奨学金は…」
「大丈夫だ。今回の結果だけでは決まらんさ。
その代わり、二度目はさすがにないぞ。次回の学年末試験は万全の状態で挑め」
先生はぐっと拳を作りながらそう言った。
「はい…!頑張ります」
深く頭を下げて、進路指導室を出る。
良かった…
この高校は私立だから、奨学金がもらえなかったら生活が厳しくなるどころの騒ぎではない。
本当に、路頭に迷うところだった…
安堵に胸を撫で下ろす。
そして次回こそは頑張ろうと気合を入れた。
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