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タクシーは、ホテルの前に何台も並んでいて、車寄せに二人が向かうと、ほとんど音もたてずにそのうちの一台がすべりこんでくる。
蒔田は深山に続いて後部座席に乗り込んで、深山が行き先である最寄り駅を告げた。
運転手がメーターを貸走に回し、ホテルのロータリーを半周する頃には、車内に流れる沈黙が少し居心地悪くなってきた。今日に限って、よくしゃべる運転手ではないらしい。
(会話…)
ほとんど初対面。しかも蒔田は深山を知っていて、深山は蒔田をたぶん知らない。蒔田が思案していると、先に口を開いたのは深山だった。
「お前、シバのなんなの?」
シバは柴田。柴田は先輩。今日の主役。
聞きようによっては、本妻が愛人を責めるようにきこえなくもない。いや、例えが大学生らしくないけど。
そんな昼ドラみたいな展開はなく。あっけらかんと深山は聞いてきた。潤滑剤としての会話。共通の話題はやっぱり今日の結婚式になる。
「後輩っす。東高の」
なんなの。そう聞かれた、ということは。
やっぱり俺のことは認識されてないかー、と蒔田はぼんやり思った。
あの試合の、あの暑い、グランウンドの上に。
蒔田も確かにいたのだけれど。
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