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最寄り駅へは、終電の一本前の電車で着いた。蒔田のアパートはメインの通りからかなり逸れたところにあって、この時間のバスはもうない。
歩くと20分くらいで、不便に感じることもある。でもまぁ、家賃が少し下がるならこれくらいは仕方ない。
「けっこう歩きますよ」
「誰にいってんの。余裕だし」
多少なまっていたとしても、もとはバリバリに身体を鍛えていたはずの人に、余計な一言だったかもしれない。
それでも、深山は気分を害したようではなかった。機嫌よく鼻歌なんか歌っている。ただの帰り道なのに、夜の散歩気分になるのはやたら陽気なこの歌のせい。「晴れたらうんぬん」は、夜中に歌う歌なんだろうか。
「途中、コンビニ寄りますか?」
歯ブラシとか、替えの下着とかいるでしょ。蒔田は振り返って、辺りをキョロキョロ見回しながらついてくる深山に声をかけた。初めて来る場所が珍しいのだろう。
蒔田の声に、小走りで距離を詰めて、深山は「オレンジジュースある?」と聞いてきた。一番聞きたいのがそれとか。
「水とコーラ、それと牛乳しかないっす」
深山は、朝はオレンジジュース飲まないと目が覚めない、とのたまった。
さらにパン派かご飯派かたずねると、「普段は食べないか、パンだけど、作ってくれる人がいたらご飯」という、甘ったれた答えが返ってきた。
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