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蒔田は辛抱強く電話の向こうからの返答を待つ。カラオケの個室のドアが開くたびに、賑やかな音楽がこぼれてくるのが気になった。
「俺は。シバたちが思うほど、弱くない」
深山はあまり大きくない声で、でもはっきりとそう言った。それから。シバが勝手にマキにあることないこと話すから絶交してやったし、と笑う。
絶交とか小学生か。
こんな場面でも相変わらずな言い方をする。一瞬、くすりと笑う蒔田の耳に、続く深山の声がささる。
「でも、マキが思ってるほども強くない」
強いとか弱い、でこの人を評価したことが、これまでにあっただろうか。
いや、面と向かって口に出さなくても。深山のことを、タフだなぁなんて思っていたかもしれない。
あの試合の時も、その前のポーカーフェイスを見たときも、それから昨日の話を聞いたときも。
蒔田はそのときその時を思い起こしながら、口を開いた。
「…それは、どういう…」
「てなわけだから。泣いたりしないし」
蒔田が疑問を挟む前に、被せるように付け加えた。
「万一泣いても、顔洗ってから会いに行く」
マキには、お前にだけは。同情とか心配とか、されたくないから。そう深山は言い切った。
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