アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
嵐来て、天使、見出す‐1
-
夜毎、押し殺した呻き声を聞く。
もう、知らないふりは限界かもと溜息して。
サイドチェストの落としていた弱い枕灯をつけた。
「千色(ちしき)、わかってるよ。起きてるの。痛いんでしょう?」
オレンジの仄暗い明かりの下でだって、長い前髪がしとどに濡れ滑らかな額に頬に貼り付く程、発された脂汗をかいていると見て取れる。
私が目覚めてしまったことにも、驚き、涙に滲んだ瞳を見開く彼ーー千色は、この世に存在する私にとって最高位の愛しいもの。
彼は、あと数か月で15歳になる、14歳。
痛みに歯を食い縛りながらも、必死に首を振るから。
赤みを差した、普段は青めく白磁色の肌から汗が飛ぶ。
嗚呼・・・
いけない。
そんなそぶりをしては、私が欲情してしまうではないか。
大切に大切にしていこうと思うのに。
「・・・だ、だめ。・・・で、でき・・・・・・あ、できま・・・せっ」
私が身を寄せるだけで、か細い声を上げ、竦み上がる小さな肢体。
痛みで、くの字に丸めた背を急に伸ばし、その伸縮にまた痛んだのであろう腹部を抱え込む、まさに痛々しい彼。
「大丈夫。しないよ。ごめんね、昨夜、私にイタズラされたから、いつもより痛いんじゃないの?」
いいえと、発する弱い声も苦痛を押し殺す隙間でようよう搾り出す唇は、噛締めて滲んだ血に濡れ戦慄き。
荒い呼気は瀕死の小動物を彷彿させる。
つい、あの形のいい小さな花唇を開かせて私の劣情を懸命に慰めた昨夜の艶姿が脳裏に浮かぶ私を最低だなと思う。
その上、律儀にも・・・白濁液を残さず嚥下してくれたのだ。
私の求めに応じれなかったことを、負い目に感じて。
「飲んだりしたから余計、良くなかったんだ。吐き出しなさいって言ったのに」
私達は、ごく自然に想い合うようになっていた。
そんな性欲旺盛な年頃の私と、千色は、毎晩、共寝しているのだから、いつしかそういう仲になり。
私しか知らない彼の秘密を知ることになって。
それは、秘すれば・・・誰も知らずに済むことだった。
一月くらい前までは。
いや、もしかしたら知られることは時間の問題だったのかもしれない。
「何か、何かできることはない?ちぃが少しでも楽になる方法は」
止むことなく益々しんどそうにする彼に、施す術なくおろおろする私に。
心配をかけることを悔い、苦痛に歪む顔を取り繕い健気に微笑んで見せてくれる彼が愛おしく。
「大丈夫」と「ごめんなさい」を譫言のように繰り返す唇を撫でた。
「・・・・・・お、くす・・・り。・・・はぁ・・・くらさっ・・・」
「もう、痛み止めはだめだよ。誤魔化せないくらい痛いんじゃないの?」
重い偏頭痛持ちの彼の為に、私が偏頭痛なのだと装い、ホームドクターから処方してもらっている薬は、「効かないからもう少し強いものを」と彼が言うまま伝えて貰っていたら、医師が渋い顔をするほど、きつい物になってしまってたそうだ。
これ以上のものを使わなければ退かない痛みならば精密検査をしなくてはいけないのではないかと、祖父に進言すると言われ、現状のものでいいと慌てて言い直したけれど。
本当に痛くて耐えられない時にだけ飲めと貰っているあれを常用しているのか?と、訝しがられる位のものは・・・処方しているって意味だろうと思う。
薬害って言葉があるのはわかっているから。
でも・・・今宵も。
苦しむ彼が忍びなくて、照明を明かるくして鎮痛剤をサイドチェストから出して、自らの口に放り込み。
チェストの上から寝所用の水分補給に備えてあるミネラルウォーターを含んで。
・・・口移しで与えてしまう。
自力で飲みこめないほどキツイ痛みに震えている彼に、冷静でいられなくて、祖父に「身分を弁える様に」と咎められている千色の愛称「ちぃ」と呼びかけてしまっている私は。
しばらくして。
やっと薬が効き出してくれ、意識を失うように眠りに落ちた千色の強張った身体を、そっと抱きしめながら、解して毛布で包み。
私は己の無力さに忸怩たる思いが溢れて、そのまま一睡も出来ぬ、翌朝を迎えるのだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 41