アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
”-1~+1” 王子の最愛の人々 ‐2
-
◇◇◇◇◇
親父からの一報の後、タクシーを呼んでもらって。
数十分歩く時をも惜しんで、家に戻り、取るもの取り合えず、タクシーをそのまま待たせておいて、大急ぎで東京駅にとって返す。
「慌てて戻るのに、何かあってはいけないからJRで来い。こっちの駅には迎えに行かすから」
「でも、一刻も早く!」
「馬鹿。お前一人なら止めん。それに新幹線の方が早い。乗ったら降りる時間、中井に知らせれば、ロータリーですぐにこちらに向えるよう必ず待機させておくから」
親父に車の運転を止められたから。 と、
「それと・・・・・・説明、しなくちゃならんだろう、健くんに」
冷静に安全運転しながら、語れることなんかじゃないだろう?
親父が暗に含ませる、俺が知ってしまった、健に言えなかったこと。
お互いが、かけがえのない固い固い絆で結び合ってる、祖母と孫である静さんと健の
二度と会えなくなる別れの時が、すぐ側まで来ているんだってこと。
12月に会ったとき、俺は気づいてしまって。
主治医になってた親父と、なにより静さんのたっての願いで、
健には、知らせずにいて欲しいって、言われて。
蒼白でガタガタ震えっぱなしの、健を
周囲の目なんかまったく気に出来ずに、ぎゅうぎゅう手を引いて。
もどかしい時なんか、抱き上げてたところもあったかもしれない。
とにかく、今来たばかりの東北新幹線に飛び乗って
空いてる席に、健を座らせて。
そこで、俺の手も、震えっぱなしだったことに気がつく。
消えそうな声で、静さん、静さんって、呟く、健の合わない目の焦点。
いつもなら、握ってる間に、だんだん温かくなる手は
幾度も包み、擦っても、温まってくれなくて。
聞こえてないってわかってても、俺はずっと、ごめん、ごめんって、健に謝り続てた。
なんのゴメンなのか、訳がわかんなくなってたけど。
結局、説明なんて出来なかった。
ごめん・・・・・・それしか、言葉が浮かばなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
11 / 337