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”-1~+1” 王子の最愛の人々 ‐8
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静さんのプランでは、火葬祭って、遺体を火葬する前の儀式をして、お骨になった静さんを、そのまますぐに 市郊外にある佐倉神社へ、先祖代々が祭られてる碑に骨を収める埋葬祭ってのをしてしまうことになってた。
神社について、遺骨を入れた箱を抱えてた健は、車から一歩も降りようとせず。
仕方がないから、取り上げようとすると暴れ。
(思いっきり噛み付いたんだ!血が出るほど。辰三さんに!!あのおっとりな健が)
なにをしても、放さないし、そこから動かない。
初めて式次第の予定が狂い、皆が困惑する。
ただ、痛いほど、健の気持ちはわかるんだ。
悲しみの感情が渦を巻いて、健を独り、健本人でもどうしようもない行動に駆り立ててる。
そうだよな。
健は、この瞬間まで、ずっとギリギリの感情を押さえ込んで
混乱したまま、静さんの死を、別れを、受け入れられずに、苦しんでる。
俺に分けることも出来ないで。
分けて、二人で、抱きしめて行きたいって、俺は思い、願うけど。
泣いて、想いを流せた俺よりも、きっと健はどうしようもないくらい、辛い。
だから、今は、無理やり引き剥がしたりしたくなくって、
静観していた斎主である、佐倉神社、女性禰宜の佐倉さんに
(佐倉神社は、明治に、本家から分かれて、神社を任された一番大きな分家なんだって)
何とかして頂けないかと、相談してみた。
「すみません。なんとか、埋葬祭を延期って・・・」
「既に、佐倉静刀自命が、こうなるならばと、策を下さっておりますよ。今日はこのまま帰りましょう。50日祭、仏式で言うところの49日法要のような方法があります。そちらに切り替えても良いとご遺言頂いてます」
祭事に関わるお礼金も、なんと、すべて禰宜様を訪ね、生前、静さんが渡していたと後で聞き
「数ある神葬祭を行わせて頂きましたが初めてでした」と笑ってらした。
そんなことは、困ると気色ばむ老人達に頭を下げるなんて、全然、苦でもなく。
禰宜さまのお口添えあって、そのまま埋葬祭だけ先送りになった。
よもや、それから、ずっと、健がお骨を離さなくなるとは思ってなかったけど。
でも、取り上げるなんてことは・・・やっぱり出来なかった。
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