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”3” 王子、悔恨に呻く ‐2
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その顛末を見ることはなく、俺と阿川と、数人の担架部隊の奴らは
小田が連れてきた、外科の教授に、案内され、緊急手術室へ健の搬送を始めてた。
その名に恥じぬ、井田は、俊足で有名で、
大学病院は、異例の速さで、救急対応を始めて、
事務側は、警察や、報道規制や・・・そんな、俺にはどうでもいいことも
迅速に進んでいってたらしい。
健の後に、運び込まれたあの男は、程なくして、死亡した。
医学部2年の、あの男も、人の急所はしっかり分かっていたようで
総頸動脈を寸分違わず、切り裂いていたらしい。
健の血で、体中を汚した阿川を、
泣きじゃくる小田が自分のサークルのジャージを抱えてきて
着替えに誘って行くのを、他人事のように眺め。
その後ろに、横山が同様に、ジャージを持って、所在無げに立ち尽くしてたことに
気がついたのは、阿川が去って、しばらく経ってからだった。
何より大切な人の窮地よりも、医術を学ぶものとして当然の処置をする・・・って
行動を、無理矢理、自分に納得させて、止血をし、呼びかけていたのが、
オペ室の手術中ライトを、呆然と見上げていると、
もう、自分では、どうにも出来ない場所で、適切な処置を受けているに違いないと
信じるしか術のない、一患者の家族に、落ちてしまって
もう、唯々、祈るしかないことが・・・切なくて、悔しくて、心許なくて。
なにが、なんで、健が刺されなくてはならないのか。
しかも学校で、見たことない下級生らしき奴に。
井田が、駆け戻って来て、俺と横山に健を刺した奴の奇怪な行動と絶命を知らせた時。
当然の報いだと思うのと同時に、
あんなことをした奴に、無理心中の様に、健を奪われてしまうのかと
もう、死んでいる奴を地獄まで追いかけて行き、
再びこの手で完膚なきまでに叩きのめし、諦めるように力尽くで諭したくなった。
留華も切り傷を負っているらしく、留華だけは、事情聴取もあるので
うちの大学病院ではなく、警察病院で治療中なんだそうだ。
今、健の倒れていた廊下は、黄色い無数の帯で規制線が引かれ、
立ち入り禁止で、現場保存、検証の最中らしい。
ほとんどの学年の生徒が集まって、黒山の人だかりになっているらしい。
事実、さっきから、俺を知る先輩達からだろう、
メールやLINE の通知音が引っ切り無しに鳴っている。
「井田が、ここに居て、見ててくれるから、とりあえず、これに着替えて来い。
剣道部のシャワー室も使っていいから、場所は、わかるか?案内するか?」
そんなこと、している場合じゃないと、叫び返してやりたいが
俺の着衣は、健の血で、あらゆる所が染まっていて
今日に限って、俺の服装は白や薄い水色の淡色でコーデしていた。
俺自身が、被害にあった人の様に、血に汚されていた。
いっそ、俺が、被害にあいたかった。
何故、あんなに弱く小さな健でなくてはならなかったんだ!
俺は、遣り切れない思いを、腰掛けた、病院の待合スペースにありがちな
パイプ製のベンチの背を殴ってしまい・・・座面を一部陥没させてしまった。
誰も、それを責めず、俺が痛ましいのか、視線を外しただけだった。
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