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”5” 王子と眠り猫 ‐1
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Side 爽
不明瞭な音が、どこかからしていると、意識が浮上する間際に訝しむ。
術後、実は3日間経っても、健は眠りから覚めない。
俺は、手術が無事に終わり、感染症リスクのみだと伝えられ、帰宅し眠れた初日の夜以外。
不休不眠で、個室に移された、健の隣に着きっきりで、今、白み始めた夜空を、うたた寝から目覚めて
数えれば4日目の朝になる。
昨日、脳波の検査が行われ、異常はなかったと告げられ、
手足や身体に反応があり、あくびをしたりする辺りから、
もしかしたら心因性で深い睡眠状態にあるのかもしれないと判断された。
やっと、連絡がつき、チベットの山奥から戻った丹羽の義父が言うには
健は、中学の事件の後も、3日間、目が覚めなかったと教えられ、
親父の学友でもある精神科医で、中学時代の健を診察し治療していて、
現、家の大学病院勤務医の鷲尾医師が、間違いないと頷いてくれた。
麻酔が体質に合わなかったとかでもないのだから、
以前の中学の事件の犯人が、健に及んだ凶行の前に、その時の画像を見せたなら。
同じショックを味わい、必死に忘却した記憶を無理矢理、呼び覚まされ。
・・・・・・絶望し、目覚めることを拒んでも、おかしくない。
刺されたことから、出血多量で、脳に血液が一時的に不足した為に
脳に重篤な機能障害が起きていて・・・という可能性も否めない。
目覚めてくれないと、どうしていいか分からない。
手術室の明かりが消え、担当医が、「一命を取り留めたから安心しなさい」と
俺達に微笑んでくれたときの喜び。
急所を微妙に逸れていた事実を、祈った相手、全てに感謝して
明日の午後に目覚めると疑わず、健の枕を抱きしめて眠ってた俺の安堵は。
今は、無常の彼方にある。
気になって、俺をうたた寝から覚めさせたのは、ロッカーに入れっぱなしにしてた
健の携帯の着信音だった。
早朝、6時前。非常識な時間に、結構長めに鳴って、途切れた。
鞄を探り取り出した、健のスマホ。
ロックもかけていないそれで、着信履歴を見れば、昨晩から、同じ番号で数件入っていた。
「あ・・・」
しかも、その番号を確認後、バッテリー切れで、健のスマホは暗くなり停止した。
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