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”7” 目覚めよ、王子の猫 ‐8
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「どうしたの?健くん」
百哉が強張った声で尋ねると、其方を振り返る。
益々、百哉の表情が緊張して行くのが分かった。
斯く言う俺も、あの久しぶりに見た強い視線に、心音が跳ね上がってる。
「ん~?き、気のせいだと思うよ。わかった、健くんがお風呂の間、調べておくね」
モニターには後頭部しか映し出されていないが、疑問や不服がある時に健がする
左に小首を傾げる仕草をし、瞬間、肩を竦め、不承不承、頷いた様子。
自分の着替えを持って、シャワーブースに消えた健の背を見送った直後
百哉からLINEが来た。
「カメラ、健くんにバレてるかも知れない。
あそこから見られてる気がするって言ってる。どうしたらいい?」
病院の備品に巧妙に隠した、実は盗撮用らしい小型カメラ。
ちゃんとカムフラージュしてあるし、そうそう、弄ってて見つかる筈はない。
事実、昨日と、見え方は何にも変わらないから、動かして無いだろう。
集音マイクもまた、きっちり隠して、ついてて起動してるし。
スマホすらも俺頼みなメカに弱い健が、見つけられるわけがない。
「大丈夫、そのまま。調べたけど何もなかったって言って恍けてくれ」
返信して、それでも、さっきの瞳の威力に、鼓動が激しく打って治まらない。
それに、健の裸眼視力は、両目で0.1未満。
中学生の時はすでに眼鏡をかけている。静さんの話によれば、小5からな筈。
こんな小さなもの、見えっこない!
「本当に大丈夫?騙し通す自信ない・・・」
「騙すしかないんだから、職業意識で何とか乗り切れ」 等々
俺達の間でLINEのやり取りをした健対応策が、ほぼ、努力と根性でGO!で固まった頃、
健は、上着を肩に羽織って、なるべく、こちら側に前を見せないように戻って来た。
健をベッドに腰掛けさせ、ステロイド系の軟膏を手にした百哉。
肩の上着をそっと外して、声をかけながら、塗布。
どうしても、身体を捩ってこちらを向こうとしないので、結構、塗るのが大変そう。
「背中も塗らせて欲しいんだけど、くるんってしてくれるかい?」
横に力なく振られる首。百哉は仕方なく回り込んで、俺の視界から健を覆うようにする。
西郷、ん~健が知ってるとしたら、金田か。
アイツは健をメッタ刺しにするつもりだったのか、腹部と胸部の傷以外にも
浅く切られた切り傷が複数ある。留華が身体を張って、アイツを押さえたから深くないが、
所々は、縫合したほうがいいと判じられた傷が残ってて、まあ、1年程で目立たなくなる位なんだけど。
その一つ一つにも、薬は塗られる。
そして、腹部と胸部は貫通した為に、背中にも刃先の出た痕が残った。
この深い傷には、保湿の為に、まだガーゼが貼られる。
真っ白な健の肌に、赤く引き攣れた肉芽が見える。
この傷達は、美容整形等の処置等しなければ・・・生涯消えない。
手当てが済んで、ハジャマの上着に袖を通して。
枕を積んで背を起こしたベットに座ると、こちらと対峙するようになる。
やっぱり、健はカメラの方を。じいっと・・・見てる。
「さっきの質問ね、健くんと一緒に暮らしたいって、言ってくれてる人が居る」
使った器具を片付けながら、百哉は、顔を上げずに話し出す。
百哉の腕を軽く叩いて、その後、指で四角を宙に書く健。
百哉は暫し躊躇し、だが、思い直したように棚から取って、健にタブレットを手渡した。
「『お兄さん?』って?ううん、健くんの言ってるのは丹羽家の末の人でしょう。
もしかして、その人がいいの?その人なら・・・・・・」
やっぱり・・・選ぶよな、恋人だったんだろうし。
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