アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
”7” 目覚めよ、王子の猫 ‐9
-
・・・・・・嘘だろ。
首を、小さく横に振ってる。
「『芙柚兄さんは、ダメ、もう会えない。申し訳ない』って、どうして?」
答えたくないのだろう、首を振り続け、悲しそうにする。
健に、理由を聞くべきじゃないことに、百哉は何となく感じたようで、話の方向性を変えようと、小さく呻る。
芙柚に会えないって思う理由は、一つしかないと思う。
身体を奴等に穢されてしまったという、負目。
前も、所々思い出してしまった時、俺にも、すごく恥じて、拒んだ。俺に穢れがうつるって。
そりゃあ、初めての男になってたなら、嬉しいとは思う。
でも、さ。健は健だし。
出会う前に、散々セフレと遊んで来た俺は、どーするのって。
きっと芙柚だって、同じことを言うに決まってる。
でもな・・・そう言われて自分を許せる性質なら、きっと記憶を失うほどにならない気がするよね。
仕方なく、本題を続ける気になったみたいで、目を閉じ、百哉は話し出す。
「昨日、健くんが取り乱しちゃった理由かもしれないんだ。
もし、聞くのが嫌になったら我慢しないですぐに教えてね。
健くんを引き取って、一緒に暮らしたいって言ってる人は、昨日の写真の人。
戸籍上はお兄さんになってるね。だから、さっきお兄さんってきいたのかな?」
こくん。と、首を縦に振り、健は暫く俯いて動かない。
昨日の様にならなくて、ちょっと、ほっとする。
でも、あの仕草はきっと、どうしていいかわからない時にする、以前の健なら。
ゆっくりと、顔を上げ、また、俺と、モニター越しに見つめあう。
唇が少し、すごく曖昧に動く。
今度は、伝える意思がないのか、本当に少ししか動かなくて、わからない。
タブレットに、健は何かを入力し出した。それを、百哉に見せる。
「『そこに居るでしょう?来て』って・・・。えっ!だ、大丈夫??男の人だよ?」
首を傾げて、考え込む。
「『会いたくないなら。別にいい』って、会いたいと思うよ!でも、心配だ・・・。
ん?はっ?!ち、違うよ!!、それは違う!」
何でか、次に打たれた文は読み上げられず、百哉が、似合わない大声を上げる。
「絶対に、違う!その誤解は、いけない!!」
百哉の動揺の意味が、わからなくて。
イヤホンつけさせるべきだったと後悔したが、後の祭り。
バタバタと泡を食う百哉に、ジェスチャーで、「もう眠い」と健は伝え、再び横になりたがった。
入浴後は体力を使うし、少しでも食事も済ませたのだ、相乗効果で眠いんだろう。
慌てたまま、ベッドを直して、横にならせた百哉を手であっちに行けと言うようにはらう。
おろおろ眠りにつくまで側にいた百哉に、健が寝付いた頃を見計らいLINEする、が、気付かず。
戸口まで行って、遠慮がちにドアを叩く。
出て来た、百哉の顔色は蒼白。
腕に抱いて来たタブレットを渡す奴の目には、涙が浮かんでた。
覗き込んだタブレット。そこには
『あの人は、看護士さんの彼でしょう?』 って書いてあった。
「そしてね、『キスしてたんだから、そうでしょう?』って、言ったよ、健くん。
京哉は、あのここで喧嘩した日から、来てない。・・・どう、しよう・・・」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
68 / 337