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”10” ネコは王子を観察す ‐2
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◇◇◇
いつも夕方には来てくれるから、昼間少し絵を描くのに夢中になってて、起き過ぎちゃったから、
遅いお昼を百哉さんが買って来てくれて、一緒に食べた、蒸しパンと紙パックのミルクティーで
お腹が膨れたら、眠くて仕方がなくて、百哉さんに、夕御飯の時に起こされるまで眠っちゃってて
変だな、今日は来たのかな?
って、思って、側机のスープジャーの入ってるミニトートを、見てみる
うん、これは、昨日の分、僕が今朝、洗っておいた空っぽ
「残念ながら、今夜は、まだ差入れ来ないみたいだね~。不味いの我慢で、病院のお味噌汁で
ご飯食べてね、健くん?オカズは・・・う~ん、これまた微妙にイマイチそうだねぇ」
ご飯とワカメとお豆腐のお味噌汁と鮭のこれは・・・ムニエルかな?
と、ホウレン草とモヤシのお浸しと、卵豆腐
お届けしてもらって、ありがたいので、百哉さんに、お礼でぺこっと頭を下げた
食べたいか食べたくないかは、もう別問題だ、うん
「後で、ほうじ茶、入れに来るからね」って、ばたばたと百哉さんは出て行っちゃった
僕の部屋には、時計がない
夏至に向かう日は長く、時間がなかなか測れないんだけど
早いお家は御飯にするって頃の時間に、病院は夕食を提供するって、僕は知ってる
きっと、いつもよりも確実に遅い、大概、彼が来てくれる面会時間よりもだいぶ
医大生で、忙しいんだろうに、毎日来てくれるなんて信じる方が馬鹿だな
約束した訳じゃないのに、なんか、待ってて、ちょっとワクワクしたなんて、馬鹿だ、ほんと
なんだか、更に食欲が落ちちゃって
でも、ご飯は半分は、頑張って食べるって、阿川さんと小田さんと約束したし
まだ、皆からお許しが出ない、元気すぎる男の子達の学友がいるみたいで
僕宛に、お見舞にって2人が預かって来てくれた、
梅干しと海苔のセットを、百哉さんがいなくなってから出してみた
紀州のやわらかい梅干しと出雲の海苔の佃煮は、なんでも、すっごく高級品なんだって
確かにびっくりするほど美味しい!でも、そんな高価なのはって尻込みしたら
なんと、僕でも知ってる国産自動車会社のご子息なんだって
そんなすごい子と、お友達だなんて、僕もびっくりだった
もしかして、その子かなって思って
あ、男の子って言ってたし、別人だよねって気が付いた
どんな女の子なんだろう、どうして、会いに来てくれないんだろう
また、僕は、思いの迷路に迷い込んで、食事に箸をつけずにぼんやり
百哉さんには内緒の御飯のお供を抱えて、遠くを見つめてた
この視線の先に、ずっと監視カメラをつけてたって
二回目に、彼、佐倉爽さんが来た時に謝ってくれた
しっくりこない名前、僕の今の苗字と一緒の彼
僕を見張ってる人こそ、この指輪の相手なんだって思い込んでいたんだけど
見張ってた人は、男性の、彼で、
なら、別の誰かが、薬指のリングの片割れを持っているってことなのかな
「ごめん!遅くなって、ご飯・・・・・・あ~セーフ?」
慌てて部屋に飛び込んできた、佐倉さん
今日は室内でいる分には爽やかでいい天気だったけど
屋外で活動するには暑かったのかな、半そでの白いシャツが眩しいくらい似合ってて
額の汗を拭う仕草が、かっこいいなって思った
僕が、会ったことのある中で、芙柚と、肩を並べるくらいにかっこいい
僕には、もう会えないし、会いにも来てくれない、芙柚に
「あとね、もう一個、ごめん。スープ作ってる時間なくて、昨日の残りの温め直しなんだ
だから、今、夕飯と一緒に飲んじゃってくれるかな?え?いい?あ~ちょっと待って」
彼は、話すスピードが速くて!
慌てて、メモを取ってってお願いしたら、彼も慌てちゃったのか、スケッチブックの方を取ってしまった
はらはらと、あの『絵』が宙を舞って、床に落ちる~
説明もなく、そっちが先に見られちゃうなんて~ うわ~どうしよう!!
「・・・ん?これって、・・・あ!」
彼の目が輝く
わ~バレた、何を描いたのかって
「俺のスープマグ、中身入りで描いてくれたんだね。嬉しいなあ、昨夜のだ」
『美味しかったから、つい』
スケッチブックの新しいページに、同時に取ってもらった、お話し用の万年筆で、答えを書いた
「これ、俺にくれますか?え、マジで!嬉しいなあ、テキストの栞にしよっと」
それは、止めた方が・・・・・・すごく食いしん坊さんみたいじゃないか?
僕は、あげるって意味で頷いたけど、栞には反対なんだけど
ほくほく笑顔で、鞄から取り出したテキスト「標準微生物学」なるものに、大切そうに挟み込んだ
表紙を見るだけで、イーッってなりそうな、難しそうな本
教科書見てみたいって、お願いしたら、ご飯を食べちゃってからねって
スープジャーも開けて、味のぼやぼやするお味噌汁をよけてセットしてくれた
そのぼやぼやはどうするのかなって見てたら、男らしく一気に飲み干した!
「まっず!健くん、これいつも飲んでんの?タバスコ差し入れる?」
そ、それは、遠慮、します
一味だったら、ちょっと心惹かれたけども
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