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”10” ネコは王子を観察す ‐3
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百哉さんが、の筈だった、ほうじ茶を、僕のマグカップに入れて持って来てくれて
なんでか、ちゃっかり自分の分も、病院の湯呑みに注いで持って来た
「小田から貰った蕎麦ぼーろ、食べていいかな、小腹減っちゃったんだよね」
確かに、あれは飲み物なしだと、喉に詰まって食べ辛い
頷いて、どうぞってしまってある棚を指差した
「健くんには、食後のゼリー出しといてあげるね、お、結構減ったね、今日はどれ食べたい?」
冷蔵庫じゃないのに、その上の棚なのに!
もう、説明するの大変だ
メモを握ろうとして、いいいいって風に、彼は手を振った
「場所はわかってます。ここでしょ?冷蔵庫のチェックもしたかったんだって。
はい、今日は、マスカットゼリーでいかがでしょうか?
あ、もう、食べたくないなら、終わりな?不味い飯、我慢してるより、ゼリー食べよ?」
僕にはトレーを押しやって、スープマグが空になってるのだけ確認して、冷えたゼリーを、
自分は、食べかけの梱包の封を閉じる可愛いクリップを開けながら、僕の側に丸椅子を持って来て座る
中学校に、人の懐に飛び込むのがうまいクラスメートがいたなって、ふと思い出す
顔も、名前も、ほとんど忘れて、というか、初めから覚えてなくて、でも、特徴はしっかり残ってる
僕も・・・・・・あんな風になりたいなって、憧れたから
そんな気質を、この彼も、持ってるなって、思う
僕みたいな、偏屈な所いっぱいの、しかも記憶喪失で中学生に頭の中身が戻ってる人に
屈託なく話しかけ、嫌味じゃないパーソナルスペースの侵害を、すっと出来るタイプ
いっつも、親しみやすくて、笑いや話題の中心で、皆の人気者で、太陽みたいな人
彼と、なんでか、僕はいつも対比して周りに称えられ、冷たい月のお姫様って言われてた
「どうした?マスカットじゃ嫌だった?」
『いいえ。マスカット、好きです。ありがとう。けんちん汁も美味しかった』
「昨日の残りで、お粗末さまでした。でも、さ?」
僕は、つい、ぼんやり、自分の思考の海に潜り込んでたのを誤解されて
急いで浮上して、メモに言葉を綴った
でも、さ? なんだろう?
「たけっ、ウ、ゴホン。健くん、いつも、こういう煮込む系は二日目の方が美味しいって教えてくれた」
ふう、もう、許してあげようかな
彼はいっつも、僕を呼び辛そうに、「健くん」って呼ぶんだ
『あの、呼び捨てでいいですよ?ずっと、そう呼んでいたんでしょう?』
つっと、彼の視線が、僕の目を射る
ぼ、僕の申し出、変だったのかな? 何か不快にさせた?
それから、彼は、大きな体を小さな丸椅子の上で、小さく丸めて、顔を隠した
ど、どうしよ・・・・・なんなんだろう・・・・・
「はあ・・・。超、嬉しいんですけど、どうしよう」
呼び捨て、芙柚も留華もしてるし
まあ、他の人は確かにしてないけど、呼び捨てって、そんなに凄いこと?
◇◇
今日、遅くなった理由は、ねって
僕のトレーを片付けてくれて、彼が話し出す
「会わせたい、って言うか、会ってみて欲しい人を紹介したくて。
でも、なんか、出かけてるらしくて、那須の地元商工会の慰安旅行とかで。
急遽、どうしてもって、別行動してもらって、帰る前に寄ってもらうことにしたんだ」
誰、だろう・・・
「男性、なんだ。怖いかな?女の人、来てもらう?」
ううんって、僕は首を振る
大丈夫な気がする、彼が、ここにいれば
どうしてだか、なんか、本当に、彼がいれば、大丈夫って
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