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”11” 別居を決意する王子 ‐6
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「可哀想だけど、起こそうか」
俺の呟きに、二人は寸陰の間もなく、反意を叫ぶ。もちろん、小声で。
おんぶはさー、姫抱きよりも接地面積広いんだってば!
後ろから、ぎゅーだぞ?意識がないって言ったって、後ろから、さぁ~!
そりゃ余裕で背負えるよ。健、入院中、ちょっと体重戻ったけど、まだまだ全然軽いから。
でも、でもさぁ。やっぱりけっこう、ね?
「では・・・私が、背負いましょうか?」
「ふざけんな。俺以外に触らせるか」
「でしょう?なら、ねぇ?」
「爽くん、意味不明だよ?なんで、おんぶしてあげないの?」
「この雨、明日の夕方まで降ってるって、天気予報で言ってましたよ?お腹空いちゃいますよ?」
せ、背負うよ。背負えばいいんだろ、うん・・・ぅ・・・、勃つかも。
どんだけ振りだと思ってんだ、お前ら、健との強密着状態がっ。
健って、なんかすんごい良い匂いするんだぞ。惚れてなくたって、絶対、意識するから!
これってフェロモンなのかなって、思ったことがある、なにせ、俺、医学生じゃない?
遺伝子が違うもの同士の体臭って、すごくいい匂いに感じるらしいって学んで。
で。健に、それを告げたんだ、そしたら、健も、ぎゅーって抱きついてくれて
「僕も、爽くんの匂い、なんか好きなの。そのせいだったのかな?」なんて、さ。
・・・・・・いかんいかん、甘い記憶を思い出すと、切なさが後で倍増しになるんだった。がっくし。
それでも悪あがきで、先に荷物を全部運びこんで・・・やっぱり眠り姫は起きちゃいなくて。
・・・・・・必死に、運んだよ。おんぶで。
寝息が首筋にかかって。緩く回された二の腕の温度が温かくて。
俺の腕にかすかに触れるウエストが細くて。掌の上の尻が程よい硬さと柔らかさで!!
寝室に横たえるなり・・・即行、風呂に行ったさ。
雨に濡れたって早口で言い訳して、脱衣所に飛び込むなり、リビングで大爆笑されてて、ムカついたけどね。
やっぱ、別居決めてよかったのかも・・・。とほほ。
だって、こんなじゃ、毎晩、一つ屋根の下で眠るの、厳しかったってば。
ま、ベッドは分けるつもりで、健の部屋の改装計画、考える度に頓挫しちゃってたんだけどね。
夕飯時まで、羽瑠はいて。
健が起きる気配がないし、何とか俺か、野坂で夕食を準備しようとしたら
「ボク、やる~。健くんにご飯久しぶりに作ってあげたいの」
って、言ってくれたんで、甘えた。コイツ、健並みに、いや、もしかしたら、健より料理上手なんだ。
圭介が家に飯食いに来る頻度が急に下がって、「ケースケさん、恋人できたかも?」って
健が先に気が付いたくらいで。相手だったのを、直接、羽瑠の口から聞いたって後で俺に教えてくれた。
俺はその時、既に知ってたけど、コイツ等が付き合ってるってわかったの、ホント偶然だった。
健が気が付いてから、二人で、相手、誰かなって、想像してて。
「絶対、家庭的な人だと思う」って健が言うのは、当たってたような外れてたような?
手際よく、仕上げたそれが、野坂が感嘆の声を上げるほど美味くて。
俺が、やっと健を目覚めさせて、リビングに連れてくる頃には、
大量のメモ用紙にレシピを習う野坂が目を白黒させてた。
「健くん、おはよ~。健くんには、大好物の夏野菜リゾットだからね。どーぞ」
俺達は、同じ具材をカレーにしたものだ。
ちょっと不思議そうな表情で、健はぺコンと一礼し、匙を取った。
「あ、ごめーん。覚えてないことだったね。ほんと、ごめん。でも、好きだと思うんだ。
えーと、野坂さん、この紙、下さい。え?あ、タブレット取って来てくれる?爽くんありがと」
つい、混同してしまう気持ちは俺にもわかる。
今の健には羽瑠と暮らした記憶はないんだ。丹羽家は義母の夏さんがあまり料理が得手ではないので
大学一年の丹羽家で、健が過ごした間は、羽瑠か健が主に調理担当だったんだ。
荷物の中から、タブレットを持って来て、健の側に置いてあげた。
俺を見上げて、唇の端を上げてぺこり。ちょっと他人行儀な笑顔。
中学校の頃の健って、無愛想じゃないんだよね、ん~そうだな言うなれば「慇懃無礼」って感じ?
思い切り、愛想笑いですって表情をするんだよね・・・本人に自覚ないし、
俺とか、本当に身近にいた人にしか、この違いわかんないと思うんだけどね。
なんかさ、目がさ、温度がないんだよね。
今までの健は、それこそ、あんまり話すのが得意じゃない分、目がいっぱいお喋りしてくれた。
・・・・・・はあ、こんなの止めよう。まだ、俺が警戒されてるって証なだけかも。
『気にしないで下さい。美味しいです、ありがとうございます』
「いいえ~ちゃんと反省する。ボク時々無神経だって、ケー君にも叱られる。ふぅ、ダメだね。
本当に優しい人と付き合うと、ボクがどれだけ不実だったかが解るね」
殆ど食べ終わって、デザートのフローズンヨーグルトをつつく羽瑠が、健の頭を撫でる。
「小さなこと、見逃さずに。細かい事、忘れずに。大好きな人を想うから出来るんだって、ね?」
何故か、視線は俺に向いてた。
慰められてるように感じたのは、多分、間違いじゃないと思う。
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