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”13” 王子、途方にくれる‐3
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バッテリー残が少ないので、充電をしつつ、芙柚のアドバイス通り、登録外でも着信可に設定するや否や
「どぅわ!・・・・・・いきなり?!」
着信があって、何だ、野坂かと電話に出る。
「健さまの向かわれた先、わかりましたよ。駅です。
那須塩原駅。メモを見せる子を乗せなかったかってドライバー達にに聞いたら、いなくて。
スマホに入力して見せてくれた子がいたって、さっき戻って来た運転手が。
特徴を訊いたら、正に健さまだったので、間違いはないかと」
「でかした!で、何時ごろ?」
「夕方5時過ぎで、待機場所から、会社の無線連絡で案内され別荘の駐車場まで行ったそうです。
相手は駐車場で待ち受けていて、乗り込むなり、携帯を見せられたそうです」
服装や特徴を伝え、顔写真は俺のスマホの画像を野坂に持たせたもので確認している。
その状況も健で九分九厘間違いない。
もう、2時間以上前か。駅に行っても無駄だろうな。
そこからどこに向かったか、だ。
「念の為、駅に行って来てみます。もしかしてまだ、いらっしゃるかも。
駅員やらにも話を聞き込みして参ります。爽さまは何か動きがございましたか?」
「今のところは、ない。ざっとでいいよ。多分、もういないと思う。
その駅を選んだってことは、新幹線に乗ったんだろうし。うーどっちだ、どっちに向かった?」
健の中学時代、頼る人がいないとするならば、
静さんのいた、幼い日、連れられて何度も訪れた、彼女の郷里を目指すのか
一応、家族とずっと住んでいた東京を目指すのか。
でも、東京の住まいは、今では別の住人が住んでて、丹羽家自体は横浜に家を建て転居している。
新住所、俺、ちゃんと教えていただろうか。連絡先、スマホには登録してあるけど、使えるか?
頭をフル回転させて、健の気持ちになって、行先を模索する。
「駅員!駅員に訊ねます!きっとそんなに搭乗客は多くないし、あの目立つご容姿ですし
服装だって、爽様が吟味された可愛らしい奴じゃないですか!きっと記憶にありますよ」
「だな。じゃあ、頼む。俺は連絡できるとこにしておくから。すまないな」
健の服装は、梅雨の時期に少しでも明るい色彩をと考えて
ライトグリーンに細かな白のフラワープリントの散る柔らかな素材のカッターシャツに
ざっくり編んだ透け感のあるクリーム色の丈の長めなサマーニットジャケット。
上にボリームのあるのが来てたから、ボトムはすっきりと濃い目のベージュのタイトなパンツにした。
健が可愛い服装をするのが何より気に入ってる小田が、べた褒めだったやつ。
ちょっと田舎じゃ見ない感じに垢抜けてたと自負してる。
「野坂、ごめん。キャッチ入ってる。一旦、切るぞ」
「はい、では駅に行って参りますから、またご連絡いたします」
野坂とのやり取りの間に、それは切れてしまって。
着信の番号は、携帯の配列で、アドレス帳登録外の番号。
かけなおすか、なおさないか、逡巡して。
間違い電話の可能性も、無きにしも非ず。一先ず、スマホは使わずに、
なんでもないことのような振りで、丹羽家の固定電話に、こちらも固定電話からかけた。
夏さんが出たけれど、いつもと変わらず。
お門違いにも、芙柚と連絡が付かないってことを謝って来た。
タクシーとか新幹線とか、その辺りの交通手段で丹羽家に向かったなら
とっくに着いていて当然な時間に、この対応。丹羽家は可能性から一先ず除外。
自然を装って、健が、遊びに行きたいと言ってたから近い内にお伺いします的なことを言い
何か変わったことがあったら、連絡をくれと頼む。
一応、保険。行くかもしれないし。ま、丹羽夫妻しかいないあの家にあえて行く気にはならないだろう。
次は、圭介。 万が一、万万が一。
俺達のマンションに帰って行くかもしれない。
もしかして、羽瑠が一緒かもしれない。アイツからも何か情報を聞き出せないか。
そんなことを思いながら、また、固定電話を手にした時。
俺のスマホが、鳴動する。
あ、さっきの、間違いかもしれないって、かけなおしを保留した、知らない番号。
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