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”17” 王子、勝負をかける ‐5
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慣れない台所って使いにくいもんだなって、まだまだアマチュアの俺は思う。
フライパンもいつもの家のと違って、焦げ付くのが早いし。 これもテフロンだよね?
あ、そうか、ここ、ガスだからか、ふむふむ。
そんなバタバタの末、何とか、形になるものが出来て。 健を起こしに行く。
あのまま、目覚めなくて、洋服のままでは安眠できないかなと思ってパジャマに着替えさせた。
入院中、けっこう体重も戻ったと思ったのに、また、ちょっと痩せてた。
傷が少し薄くなってきてるとこもあったりして、美肌の湯に毎日浸らせてたのも効果あったのかな?
なんて思ったりして。でも、こんなに傷だらけにしちゃってごめんって、何よりも思った。
俺がドアを開く音で、パチッと目を開けた。
声をどうかけようかなって、しばし観察してると、跳ね起きて、クラッとしてる。
これは、こうだな。
「おはよう。パン食になっちゃったけど、朝飯食わない?」
「あ、あの。ごめんなさい。なんで、僕、ベッドに。えっと・・・・・・」
「ま、説明は後にして。いつから食ってないかわかんないけど、腹減ってない?」
言い訳モードになってるのを、無理やり治めさせて。
わざと、戸を開け閉めする、団扇で風を送るみたいに。ほーら、食い物の匂いだぞ~って。
予測では、昨日の昼からだと思うんだが、下手すると朝も食ってないかもしれないしな。
「い、いただき、ます。あの、お帰り、なさい」
「ただいま~。今日からどうぞ宜しくね。冷めちゃうし、行かない?」
「き、着替えなきゃ。あれ?いつの間にパジャマに・・・・・・」
「あ~俺だけだから、そのままでいいよ。ご飯食べたら、風呂入りなよ。露天お湯張っておいた。
それから着替えたらいいじゃん、ね?」
小首を傾げ少し考えて、こくんって頷いてくれた。
あ、眼鏡、リビングのテーブルの上だったな、手を引いてあげようかな。
「暑くも寒くもないと思うんで、上着はいいよね?はい、お手をどうぞ」
迷いつつ右手が伸びて。
重なる前に、まるで、火箸を握らされたみたいに、手を逃がす。
こくっと、喉が鳴り、生唾を飲んだ気配がした。
「ちゃんと、迎えに来たんだ。健を。だから、もう、頑張って守ってくれなくても大丈夫」
俺を仰ぎ見る、琥珀の目は、大きく開かれて。
「頼りなくってゴメン。情けなくってゴメン。もっと早く安心させてあげなくてゴメン。
それから・・・・・・」
「それ、から・・・?」
「よかったら、感謝の気持ちを込めて、君に、名前を贈りたいんだけど、嫌かな?」
更に大きく開いた眼を、瞬くと。
大粒の真珠のような涙がほろほろと頬に落ちた。
「やっぱり、健って呼ばれたいかな? 嫌だよね、うーん。それに名前の候補考えてなかったや」
「・・・・・・健は、僕を、カオルくんって、呼んでました。むっ、かし・・・」
呟くように、細い声が嗚咽に混じってする。
「そっか~。やっぱりセンスいいなあ、家の奥さんは。昔からだったとはねぇ。
じゃあ、カオル君、俺のつたない朝飯、一緒に食べよう、ね?」
コクンって、また深く頷いて。
カオルは、健とは違う、ちょっと皮肉気にも見える笑顔で、俺の左手に左手をのせた。
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